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えぴそーど44 『魔王が女の子ってマジなの!?(仮) -もの言わぬ革命者-』

えぴそーど44


一行の進路も回れ右だ。シンガパールは東南マジマの岬の果てにあるので、内陸まで戻らなければならない。まぁ象のトロデがいるゆえ、手間がどうという話もない。

せっかくなら観光を兼ねたいので、往路とは少し違う土地を通って、ハンコックあたりまで北上した。

ハンコックには滞在したくない。その近くの小さな町で休息を挟むと、進路を東にとった。


さらに進むと東南マジマの大国の1つ、ホチーミンに辿り着いた

ヒ「どわーーー!!」

少し前からトロデの背の上でうつらうつらしていたヒナタは、ホチーミンの光景を見て度肝を抜かす。

なんと、原付バイクが足の踏み場もないほどに無数に行き交っているからだ!

カ「む、無法地帯(汗)」カンナも声をなくしている。

ミ「うふふ。もはやちょっとした名物になってるのよね(笑)」

もはや、なんでこれで事故が起きないのか不思議に思うほど、無数のバイクたちは器用に互いをすり抜けながら走っていく。見知らぬ者同士の膝と膝が、時々ぶつかっているようにも見える。さらに、それらの原付バイクの多くが、2人乗りをしているのだ。いいや、3人乗りや4人乗りまで・・・!

これはもう、ヒボン列島に育ったヒナタたちからすれば奇妙なカルチャーショックである!

ヒ「あれ?原付って二人乗りしたら交通違反じゃなかったっけ?」

カ「ヒボンではね。国によって違うのよ、そういうのは」

ヒ「4人乗りしている人たちまでいるよ?

 原チャリ一台で家族4人移動できたらめっちゃコスパいいね(∩´∀`)∩」

カ「旅行先はもっぱら地獄だけになりそうだけど?(´_ゝ`)」

笑えないが、笑える国である。旅は、面白い。



それにしても息が詰まりそうな光景ゆえ、一行はもう少し郊外まで出た。

大きな病院が見える。

そして病院の周りには、落ち込んだ顔をする大勢の町民たちが元気なくうなだれていた。

そのうちの1人に声をかけてみる。

ヒ「どうしたの?」

女「いえね、病気だから病院に来たんだけど、混み過ぎていて中にすら入れてもらえないのよ」

ヒ「何の病気なの??」

女「ゴホっゴホっ!

 排気ガスを吸い込み過ぎて、気管支の病気になっちゃったみたいなの」

他の病人たちもゴホゴホと言っている。

カ「そりゃそうよね。あんだけ無数のバイクが排気ガスまき散らしてれば(汗)」

ミ「バイクの数を減らすように、国に掛けあったらいいんじゃないですか?」

女「そんなことあたしは知らないよ!お偉いさんがやることだろう」


すると、行列の前に奇妙な老人が姿を現した。長ーい頭はツルツルにハゲていて、仙人のようないでたちをしている。

?「やぁ皆の者!わしが現れたからにはもう大丈夫だ!

 わしは不老長寿の神、付録寿(ふろくじゅ)と申す」

ヒ「不老長寿なのにジジイさんになっちゃったの??」

付「ジジイになってから不老長寿になったのじゃ!」

女「あなたがかの有名な付録寿さまですか!!」

付「ほほう知っておるか。よい心がけじゃのう。

 そうじゃ。薬草のエキスパートとはワシのこと。世界中の人を癒しながら周っておる」

ヒ「へぇすごいじゃん!

 頭の髪の毛が生える薬草は作れなかったの?(・∀・)」

付「そなたは黙っておれ!」

ミ「あっはは!」


女「私たち、排気ガスで気管支を病んでしまったのです!何か良い薬はありませんでしょうか?」

付「これはこれは気の毒なことじゃ!

 飲むだけで簡単に治せるサプリを譲ってやろう。30ゴールド(約3000円)じゃ」

女「30ゴールドですか!高いですぅ(汗)」

付「なに?医者にかかったとて30ゴールドをとられるでろう。

 漢方だって市販薬だって30ゴールじゃ。決して高くはない」

女「しかし私は生活保護に頼る貧困者でして・・・」

付「安心せい!

 なんと、これ1つではなく3つセットで30ゴールドなのじゃ!

 太っ腹ぁ!」

衆「おぉ!!」周りの者たちが沸きはじめた。

衆「オレ、買おうかなぁ!」

付「いいや待ちたまえ!もっとお得なハナシがあるのじゃ。

 なんと、さらに!

 『飲むだけやせーるスムージー』の付録がついて、30ゴールドじゃぁぁ!!!

 さらに、定期便なら送料無料じゃぁぁぁー!!」

衆「買うぞー!」

衆「買ったー!」

衆「買う買うー!」

なんと、聴衆は付録寿とやらに人だかりを作ってしまった・・・。

ミ「ちょっと待って!!」ミサトは珍しく大声を出して、聴衆を静めた。

ミ「お爺さん。率直に言って、そのサプリ、怪しい商売に見えます!」

付「な、なにを申すか!」

ミ「お爺さん、そのサプリには何のラベルもついていないけれど、何の野草を使っているのですか?」

付「こ、これか?

 えぇと・・・ザッソーウとザソーウとハブ―を高度な技術で煎じ合わせたものじゃ!」

ミ「聞いたこともありません。

 東南マジマの地域で気管支に効く薬草と言えば、もっと違う名前のものが有名です」

衆「うん?こいつは怪しい奴なのか?」

衆「ザソーウってなんだ?」

ミ「《マホトーン》!!」ミサトは不意に、魔法封じの呪文をとなえた!!

付「うくく!なんだかノドがイガイガする!」

ミ「ではご自慢のサプリを飲んだらよろしいのでは?」

付「い、いや、これは・・・!」

ミ「すぐによく効くサプリなのでしょう?良い機会ですから、実演して見せてください」

付録寿は追い詰められて、やむなく自前のサプリを口の中に放り込んだ。

付「おぇぇぇぇ!!!不味い」

衆「なんだぁ!飲めたシロモノじゃないようだぞ?」

付「おぇぇぇぇぇ!!」

するとセナがトコトコと付録寿に歩み寄っていった。

セ「だいじょうぶ?おじいさん。お水を飲みなよ」

セナは奴の『飲むだけやせーるスムージー』を強引に奴のノドに流し込んだ!」

付「ぐおぉぉーー!!お腹がぁぁぁ(下る)ーー!!」

付録寿は、あまりの苦痛に気絶してしまった!!

ミ「誰か、この人を警察に突き出しておいてくださいな」

衆「おぉー危なかったぜ!

 あんたのおかげでだまされずに済んだよ!!」

聴衆は付録寿を担ぎあげ、警察へと連行していった。


ヒ「ねぇミーさん、サプリメントって効かないの??」

ミ「有意義なものもあるけどね。

 あの人のみたいに、『すぐ治る!』とか、『オマケ付き!』とか『定期便購入で激安!』とか言ってるのは、どれも怪しいものばかりだわ」

ヒ「あっぶねぇー(゚Д゚;)」

カ「コロッとだまさないようにね!

 効いたとしても、原価3ゴールドのものを30ゴールドで売ってるんじゃ悪徳商売だからね」

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