えぴそーど50
一行はこのお寺で泊めてもらおうと思っていたのだが、そのもう一方の宗派の僧院もすぐ近くにあると言うので、休まず行ってみることにした。
再びトロデに乗り込む。
ヒ「なんかちょっとワクワクするんですけど(∩´∀`)∩」
カ「僧院巡りを?ヒナが?」
ヒ「うん!
なんか『悟り』とかって興味ない?『ニルバーナ』とか『菩薩』とか?」
カ「ヒナ、魂は意外と熟練してるのかしらね」
ヒ「そんなわけない(・∀・)」
ミ「そこは言い切るのね(笑)」
するとまた、大きなお寺が見えてくる。
そして今度は、近づく前から声が聞こえてくる。
「せい! やー!」
ヒ「おぉ、なんか運動部っぽい掛け声聞こえてくる!
準備しないと!」
カ「何の?」
ヒ「ローリングサンダー・アゲイン!」
カ「異種格闘にもほどがあるんですけど」
今度はお堂の中ではなく、外に数十人もの僧がいる。
そして、空手の型のような動きをしているではないか。
しかし空手ではない。太極拳でもない。
勢いよく飛びあがったかと思うと、宙返りしたりする!
ヒ「ローリングサンダー・アゲイン!」
カ「近いとも遠いとも言えないわ!」
ミ「モンクだわ」
ヒ「モンク!?」
人どころか象が近寄ってくるのを、この寺の僧たちは無視はしなかった。修行を続けながらも目で追っている。
そして間近までくれば、師範代が代表して一行に話しかけるのだった。
師「おやおや、どなた様じゃね?
ここはブターンの国じゃよ」
ヒ「おぉ、亀仙人!
ヒナタ坂46の影山ヒナタです♡
偏差値は46、IQは146です♡」
カ「それに地味に笑えるわ」
師「はっはっは!ワシの戦闘力は146じゃ」
ヒ「それ人間の中じゃ超すごいんですけど?Σ(゚□゚︎`)」
師「そうじゃな。我々は、体を鍛える趣味を持つ僧。モンクと呼ばれておる」
ヒ「天下一武道会出るの??」
師「いいや。組手はしない。一切しない。
戦うことに興味はないからな」
ヒ「えー!それじゃ何で修行してんのΣ(゚□゚︎`)」
師「おのれを鍛えるためじゃ。それだけじゃよ。
強いて言えば・・・我々は、己と戦っておる」
すると目の前で一人のモンクが、すごく俊敏なパンチを見せた。
ヒ「すごぉー!ボクシングの人より速そう!」
師「しかし!誰とも戦わない」
カ「あぁ、深いのね」
ミ「えぇ?本番には弱い控え選手的な?」
師「いいや。そうではない。
強くなればなるほど、その拳を試したくなるのが人の常。
しかし、それをやったら他人を傷つけるであろう?強さを試すは良いことか?」
ヒ「試合なら?」
師「『試合だった』という口実なら脳震盪(のうしんとう)を起こさせてよいのか?腕の骨を折ってよいのか?」
ヒ「ダメかも!」
師「左様。
あくまで、己を鍛えるために鍛錬をするだけ。暇つぶしのために、我々は体を動かす。人を打ち負かす欲はない。
人を打ち負かす欲を、出してはいけない。
それが芽生えたとき、自分で自分を制しなければいけない。
そして木こりが巧みに木を切り倒し続けるように、ただ淡々と己の筋肉だけを鍛える。
負けないように、鍛える。
天変地異が来ても負けないように。
魔王が襲ってきても死なないように、鍛える。
タフならば、負けない」
ヒ「それで隙を見つけたら魔王やっつけるの?」
師「やっつけない。
魔王が帰ったら・・・
ここでまた、それまでと同じ生活を続ける。
畑を耕し、体を鍛え、太陽にこんにちは。お月様にこんばんは」
ヒ「むむぅ!
それ『悟り』だΣ( ̄□ ̄|||)」
師「左様。はっはっは。
もうここで旅を終えるか?人生は悟るためにあるにすぎん」
ヒ「えぇぇ!ここはつまんないΣ( ̄□ ̄|||)」
師「はっはっは!では悟るまでもう少し旅をするんじゃな。
『悟り』を知っていても、悟っているとは限らない。
その人の悟り具合は、荷物の中身を見ればわかる」
ヒ「えぇと、鼻毛ばさみと、まつ毛ビューラーと、臭い香水と、ラメラメのアイシャドウと・・・」
師「はっはっは!雑念だらけじゃ。
何もせずとも可愛いのになぁ」
ヒ「おじさん、『すっぴん風メイク』が見抜けないのですぅ♡」
師「なぬ!ワシにも死角があったか!これはまいった!!
はっはっは!」
ミ「賢者と互角にわたりあってるわ(笑)」
カ「漫才で、ね」
ヒ「おじさん漫才も強いね♪」
師「まぁな。はっはっは!
それを見抜くおぬしはなかなかのモンじゃ。なかなか強いよ、おぬしは」
ヒ「わーい褒められた(・∀・)」
ヒナタは僧たちの修行を眺めながら、何かを思った。
ヒ「あぁ思いだした!
なんかチュウコク雑技団みたい!」
師「左様。
人を殴る気はしないが、鍛えた肉体でカネや名声が欲しくなってしまった者は、ここを離れて雑技団なんぞ入る」
ヒ「えぇ!雑技団の人ってオリンピック選手よりスゴいんだよ?
超人的なローリングサンダーするんだよ?」
師「運動神経は良いが、超人的ではない。人を超えてはいない。
人を超えたら、肉体を人に見せつけようとはせんさ」
一行はブターンの国の僧院で、ひと時の休息を分けてもらった。
彼らはお金も取らずにヒナタたちに寝食を与えてくれた。
庭の畑で採れたという野菜は、味が濃くてとても美味しかった。トマトってこんなに甘いの!?ヒナタは驚いた。