エピソード108
マ「まりん。そなたは神秘や魔法に憧れるか?」
ま「いいえ、あまり」
マ「はっはっは。それでよい。
過去に、地球の歴史上最高の神殿に仕えていた者が、踊り子のブループリントを携えて生まれてきた理由が、わかるか?」
ま「うーん?」
マ「『魔法は1つではない』という真理を体現するためだ」
キ「ちょっと!意味がワカンナイわよ!」
4人「仙人の扱いが雑すぎるー(汗)」
ゆ「魔法は一つではない?」
マ「魔法とは、魔法だけではない。
神秘的にも思えるチカラを発揮するのは、何も魔法だけではない。
たとえば料理だ。
食材を組み合わせることによって思いがけない味になり、人を健康にしたり恍惚させたりする。
それは一種の魔法だ。現代人にとってその化学変化は当たり前なのかもしれないが、原始人にとって、玉ねぎを煮込むことで甘くなるなど信じられぬ奇跡だった。信じない者も多数おり、喧嘩すら起こした。
しかし実際に料理人たちは、食材を巧みに組み合わせて毎日魔法のような飛躍を起こして見せる。
たとえば踊りだ。
そなたの踊りを見て元気になった者が、どれほどいたか知っているか?
《ホイミ》と似たようなものだ。
ただ体をくねくねと動かすだけなのに、それを見て人は感動したり元気になったり、心を揺さぶられる。
魔法とは、魔法だけではないのだ。
魔法という名前の付かぬ魔法が、世界には数多ある。
そなたは今生、《魔法使い》という肩書きを持たずに人々を癒したり突き動かしたりする使命を、持って生まれた」
ま「そうだったんだ・・・!!
でもダンスに飽きて旅立ってきちゃいましたぁ(汗)」
マ「それでよい」
5人「えぇ!?」
マ「旅もまた魔法の1つだ。
それは人の人生を大きく変化させてしまう。猫を犬の姿に変える魔法と大差ない。
そなたは旅先で人と話し、笑い合うことで、『猫は犬になれる』と気づかせながら生きていく。
そなたの話に触発されて旅立つ者がいたなら、そなたは猫を犬に変えてしまったのだ。はっはっは、罪深いものだ!
旅の最中で踊りを披露することもまた一興。さすらいの僧侶と同じ様なものだ」
キ「ぐー、ぐー、ぐー・・・」
4人「キキちゃん寝てるっ!!!」
キ「はっ!ごめんなさい!
どうしてもわたし、あなたの長ったらしい話を聞いてると眠くなっちゃうのよねぇ~」
ゆ「『どうしても』ってどういう意味?
まさか、初対面じゃないの?」
キ「そのまさかでしたぁ♡
キキちゃんが守護天使のときにお仕えしてたのは、マーリンさんでしたぁ♪」
な「えぇー!?」
ア「何だコリャぁ!?」
ゆ「そ、壮大な物語・・・!!」
ま「1つだけ、聞いてもいい?」
マ「よかろう」
ま「わたし、ダンサーを辞めてきちゃって良かったのでしょうか・・・?」
マ「良い。それもそなたのブループリントの一部だ。
高名な踊り手になることは、魂のポテンシャルからは予測されていた。
富や名声を得て、大衆の期待を背負い込んだ後、しかし1つの道では飽き足らずに旅に出る姿までをも人に見せることが、そなたの使命だった。
言っただろう?
そうしてそなたは、猫を犬に変える。保守的な少女たちを旅人に変える。
フィギュー国で最も有名なそなたがその姿を見せることで、1万もの猫が犬に姿を変える。
1万もの内気な少女たちが、旅に出る勇気を得る。
それがどれだけすさまじい魔法か、わかるか?」
ま「自分のことだけしか・・・考えられないです・・・」
マ「それでよい。使命などと気負うことはない。
人と話し、語り、笑い、涙すればよい。
それだけで使命は叶う」
それだけ告げるとマーリンは姿を消した。
他に何も起こる気配はないので、一行は引き返すことにした。
番人は相変わらず入口のところで暇そうに突っ立っており、一行が中で何を体験したか、気に留めるそぶりもなかった。
婆「おぬしら荷物を預けず神聖なピラミッドに入りおったな!
1000ギルずつ罰金じゃ!!」
しかし、一行は視線すら合わさず無視してそこを離れた。
砂漠地域での立ち回り方を、一行はだんだんわかってきた。