エピソード114
ゆなは思いついたように、初老の修道女に尋ねた。
ゆ「ひょっとして、天使の里にお邪魔することも許してもらえたりしますか?」
修「彼女たちに着いていけばよいでしょう。里の人に受け入れてもらいやすいです」
な「わーい!」
修「しかし!
繰り返しますが、誰でも通しているわけではありません。
あなた方は攻撃的な感情がまったくないので、特例です」
ア「武器を、置いていったほうがいいのかな?」アミンは背中のオノを指さした。
修「大丈夫でしょう。
里の指導者たちは格好よりも、オーラを視ますから。
オーラを視て、攻撃性の有無を判断します」
2人を乗せて、馬車は天使の里を目指した。
ちょっと新しい仲間を加えることにはもう慣れたが、「天使の人」というのは新鮮だ。
一行は少女に色々尋ねてみたかったが、彼女は上手く応じることが出来なかった。愛想よく微笑むが、説明が得意ではないし、一行との交流を恥ずかしがるのだった。その微笑みから敵意や不安がないことは察せられ、一行はそれで満足した。
修道院の裏口から出て、木立の中を進んでいった。
森の中、というほど険しくもないが、魔物は出ないのだろうか?昔、この辺一帯も例の吟遊詩人が結界を張っていったらしい。里だけでなくその周辺も守られている。
やがて馬車は、木立の中の隠れ里に辿り着く。
それはなんだか、冒険の始まりの頃、アミンのドワーフの里に着いたときを思い出させるような光景だった。
木立の中に人から隠れて生活を営む者たちがいる。素朴な木の家を建て、原始的な穏やかな暮らしをしているようだった。
一行は里の入口で馬車を降りる。
入口付近では、老婆が日を浴びながら編み物などしているのだった。
婆「まぁ誰だいあんたたちは!」
キ「2人の人間と、ドワーフとエルフなんですぅ♡」とキキはレディっぽくお辞儀をした。
それよりも先導者の修道女と天使の少女を見て、
婆「そうかいそうかい」と安心するのだった。
な「ここは本当に、天使の里なの?」
婆「そうじゃよぉ。
天使たちが、3回目の転生を生きるための里じゃぁ」
3回目の転生を生きる!?また興味深いことを言うものだ。
一行は早速足を止め、老婆の横に座り、「どういう意味?」と尋ねてみた。
婆「まぁあまり詳しく話すわけにもいかん。
とにかく、質素で平和な、自然愛に満ちた人生を生きるために、こういう村に生まれ落ちる」
な「そしたら、どうなるの?」
婆「すると次に、ハイテクな文明に生まれ落ちても、家電に溺れるようなことにはならん。
そして看護師の仕事に愛想を尽かしたような立派な人に着いていき、カラフルにも誠実な人生を生きる」
な「なにそれわたしみたい(笑)」
婆「そうじゃよ♪」
4人「え!?」
婆「娘さん。あんたも天使の転生者。
4回目の転生を、エンドールの街から始めた天使じゃ」
4人「えーーーーー!!??」
婆「えーって、エルフの娘さんは気づいておったじゃろが♪」
キ「まぁそうですけどぉ♡」
な「キキちゃぁーん!なんで教えてくれかなかったの!?」
キ「まだそういう話をすべきでない、って状況だったからよ」
ゆ「このパーティ、いとも多種多様な構成だったのね・・・」(どうりで大変なわけだ)
婆「ほっほっほ!
そういうおぬしは宇宙人の魂じゃがな!」老婆はゆなを見て笑った。
な・ゆ・ア「えーーーーー!!??」
婆「これこれ、あんまり大きな声を出すんでないよ。
この村の天使たちは明るくも上品な子ばかり。ビックリするからな」
ゆ「わ、わたしが、うちゅうじん・・・!?」
婆「まぁそう珍しいことでもない。エンドールとて100人に1~2人は宇宙人が混じっとる。
おぬしのように献身的な仕事に興味を持ち、しかしその内情に失望して、何を助けて生きればいいのかわからなくなる・・・そんな崇高な苦悩を持つ者に、宇宙人の転生者は多い」
ゆ「・・・!!」
婆「エルフのお嬢さん。よくやったよ。
おぬしはこういう子に救いの手を差し伸べるべきじゃ」
キ「えっへっへぇー♡」
キキは、ゆなのことを背中から愛おしそうに抱きしめた。
ゆなは、賢者や年配者がやたらと自分を好いてくれることを不思議に思い、照れくさく思った。