エピソード126
れ「この鎧のパーツを全部装備するのは、私には重すぎます。
でも、胸当てとか肘当てとか、主要なパーツだけに絞れば私でもどうにかなるんじゃないかと思って」
れいお得意の、頭を働かせたのだ。世界にない防具を創ってしまえ!
防「ははは、面白いこと言うな!
でもそんな簡単に壊せるようなもんじゃねぇよ。組み立て式じゃなくて、もうハンダで固定してあるからなぁ」
れ「やっぱり無理ですか・・・」れいはしょぼくれる。
防「ははは。『オレには』、無理だ!
街はずれの鍛冶屋に行けよ。鍛冶屋だったらやってくれるかもしれねぇぞ。
ただしだ!
失敗したって返金は受け付けねぇからな?」
れ「鍛冶屋!武器を打つ職人さんのことですね?」
防「そうだ。防具だって、農具だって打つんだよ鍛冶屋は。
鎧の分解くらいは出来ると思うな」
れ「良かった!」
防「娘さん、そんなユニークな発想してんならよ?
『鍛冶屋』ってのを覚えとくといいよ。またいずれオーダーメイドしたくなるときがあるだろうからなぁ。
鍛冶屋ってのは、そこそこ大きい街にはあるよ。武器屋防具屋ほど目立つ場所にはないんだ。その近くの裏通りとか、街外れだったりもする。カンカンうるせぇからさ」
れ「鍛冶屋さん。覚えておきます!」
防「《シルバーメイル》1着6,000ゴールドだ。毎度あり!」高価な買い物をしてしまった!
れいは防具屋の親父に、鍛冶屋の住所を教えてもらい、そこへ向かった。
面白い。こんなふうに幾つかの情報や手助けを渡り継ぎながら、ユニークな今日を創り上げていくことが面白い。お金持ちだったら別に悩むことなく、軽くて強い高級防具を買えば済むのだろう。でも、それよりも上等な結果のような気がする。れいにとっては。
れいはワクワクしながら、教わった住所を目指した。
なるほど鍛冶屋というのは街のはずれにあった。カンカンと鉄を打つ音がする。なるほど。街中にあったらクレームがひっきりなしだ。
トントン。
カンカンカン!
トントン。
キンキンキンキン!
れいが戸を叩く音よりも中での作業音のほうが大きすぎて、主は客の来訪に気づかないようだ。
れいは仕方なく、返事を得る前に自ら戸を開けた。ガラガラガラ。
カンカンカン!まだ気づかない。
れ「あのう、すみませーん!」
カンカン!「あ?母ちゃん何か言ったか?」鍛冶夫は奥の間に目をやる。
れ「あの、私です」
鍛「おぉ、びっくりした!
うちは武器屋じゃねぇぞ?修理屋みたいなもんだ」
れ「はい。鍛冶屋さんですよね?
鎧の改造をお願いしたくて、防具屋さんに教わってここにきました」
鍛「鎧の改造?女が?お姉ちゃん酔っぱらってんのか?」
れ「いいえ、酔っぱらっていません。
変なこと言うなって防具屋さんにも笑われましたが、私は女だからこそ、重たい鎧を着れないので・・・」
説明しながら、今購入した《シルバーメイル》を具現化して見せた。
鍛「おぉ、びっくりした!
なんだ、姉ちゃん奇術師か!」
れ「いえ。
この《シルバーメイル》を、分解してもらいたいのです。
胸当てとか肘当てとか、守備力の高そうなパーツだけを残してほしいのです」
鍛「ふんむ。変なこと言うなぁ」鍛冶屋は興味深そうに目を丸くし、手で鼻水を拭いた。
鍛「まぁ出来ねぇこともねぇよ。こうして、こうして、こうだろう?」
鍛冶屋は紙に設計図を描いた。とても汚い絵だ!でも言わんとしていることはわかる。
れ「はい、そういう感じです!」
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