エピソード130
アミンは場所を変えた。
広場に腰かけ話を再開する。
ゆ「で、何がマズいの?」
ア「僕たち、コスタールの英雄をやっつけちゃっただろ?」
な「へへーん♪」
ア「へへーんじゃないんだよ!
クレージュの人たちが、世界樹に行くためにコスタールと癒着しているのだとすれば・・・
僕らをその船や飛行機に乗せてくれる可能性は、0どころかマイナスだよ!」
な「マイナスって?」
ア「ひょっとすると・・・
英雄暗殺の指名手配がもうクレージュにも出てるかもしれない!
『大道芸人みたいな4人組を見かけたらしょっ引け!』ってこの街のお偉いさんたちにお触れが出ているとしたら?
僕ら捕まって牢屋行きだぜ!」
な「指名手配!?」
ア「それに近い立場になっちまう可能性がある。
だから、酒場にも行けないな。
《WANTED》の貼り紙で、指名手配されてるかもしれないよ!」
ゆ「『世界樹への行き方は?』って町の人たちに聞けなくなっちゃったわ。
一番近い街まで来て、情報が得られないなんて!!」
な「えぇー!!どうするの!?」
ここまで来て手詰まりというのか!?
キ「いいえ、まだ望みはあるわ!」
3人「本当!?」
キ「人魚を探せって、言われなかった?」
ゆ「そうだわ!そういえば!」
キ「この締め出しは、ある意味ではラッキーだったのかも♪
だって、街の中で世界樹に行く情報を探しまくっても、きっと叶わなかったのよ。
そして人魚のこと忘れてずーっと遠回りしてたかも。
私たちが道を尋ねるべきは、人間じゃなくて人魚、そうでしょ♪」
な「人魚さんに会いたーい♡
でも人魚さんはどこにいるの?」
キ「わからないけど、海に出ましょうよ。
この街にはいないわ。少なくとも」
また一行は、宿屋でゆっくり休息することも叶わず出発することとなった。
とにかく海まで出よう。どこに何があるかはわからないが、海が見えるところに。
馬車を駆ってさらに東へ進む。ほどなく潮風が強くなり、そして海が見えた。
モンバーバラほど綺麗な海色はしていない。波は高く、音は激しく、少し怖い感じがした。
海にも色々あるのだな、と一行は思った。ひょっとしてまたバカンス気分を楽しめるかと期待していたが、そういうムードではなかった。
南側の視線の先には、漁港が見える。
この高い波にもめげず、港を造って船を出しているようだ。そして漁に励むのだろう。
漁港が人魚の棲み処であるとは思えないが、何か情報や噂を持っている人がいるかもしれない。
港は、漁から帰ってきたばかりの船からの荷揚げで賑わっていた。
とりあえず尋ねてみる。人魚は知りませんか?
男「はっはっは!さてはコスタールの金持ちの家の子だな?
人魚だって?もっとカネになる探求をしたまえよ!」
男「何言ってたんだ!人魚は実在するぜ?
俺の親戚が人魚に助けられたって話してたよ!」
男「助けられたって?嘘だろ?
人魚は漁船を沈めるんだよ!」
有力情報であるような、そうでないような・・・
ア「つまりこの辺にも人魚の目撃情報はあるってこと?」
男「まぁちらほら聞くぜ。
でもそんなの勘違いかもしれねぇし、デマカセかもしれんよ。
この目で見ないことには、なぁ?」
男「そうだよ。はっはっは!
魚やタコはたしかにいて、カネになるさ!」
何人かに話を聞くと、たしかに人魚に遭遇したという噂がちらほらあるようだ。
とりあえず漁港の人々には一行は指名手配されていないようで、一安心した。