エピソード151
東海岸を目指す。
そろそろ港町の情報を耳にするようにもなってきた。間には1つ2つの小さな町があったが、れいは最低限の食料調達や休息だけに留めて東へと向かった。海を渡る船まで近い、となると気がはやる。
貿易都市でもあるようで、近づくにつれ荷馬車を見かけることも増える。ある1つの馬車に乗せてもらった。
聞くところによると、港町の名前はサンマリーノという。
荷馬車はサンマリーノの港の前に着くと、「ここでいいかい?」とれいを下ろした。
れ「うわー!」
大きな船が幾つも港に停まっている。これもまた海の風景の1つだ。船にも大小があることはれいも知ってはいたが、大陸を渡る客船がこんなにも大きいとは、想像もしていないのだった。世界中の人が乗り込めそうだ。
そんな船が3隻も停まっていて、れいは世界のさらなる広さを思い知る。
船に乗りたいのだから、船のほうに行けばよいのだろう、とれいは察した。
どの船が東の大陸に行くものかはわからないが、とりあえず一番近くにある船に向かう。大勢の人や手押し車が行き交う中を、時に人の肩にぶつかりながら、時に手押し車につまづきながら、波をかき分けていく。
船への渡し板が見え、その前に人が立っている。あの人に言えばよいのだろう。しかし・・・
船「東の大陸だって?それならあっちだよ」
彼はぶっきらぼうに面倒臭そうにそう言うと、れいを突っぱねた。あっちって?あっちにはまだ2隻船がある。これ以上の質問は受け付けてくれそうもないので、れいはあきらめて地道に歩く。
船はとても大きいので、隣の船に移動するだけでも結構な距離で、面倒くさいのだ。
そして真ん中の船の渡し板に着くと・・・
船「チケットが欲しいのか?そりゃチケットオフィスに行けよ!」
れ「どこですかそれは?」
船「港の手前だ!」怒っている。
「港の手前だ」という言葉を、怒って言う必要があるのだろうか?れいにはよくわからない。都会は怖いな。
「手前」らしき場所まで戻ってくる。人が大勢行き交い、積み荷など運んでいる。
店のようなものが見えるには見えるが、屋台で食料を売っているのが数軒、そして地べたに風呂敷を敷いてよくわからないものを売っているのが数軒・・・どのみち乗船券とは思えない。
道行く船員らしき男に「チケット売り場はどこですか?」と尋ねてみる。
男「知らねえよ!」やはりぶっきらぼうな返事が返ってくる。
船に携わる仕事をしていても、チケット売り場がどこかは把握していない。船の仕事とは、よほど大勢の人に分担されているのだな。
何人かに尋ねるが、皆「知らない」と言う。
疲れてきた。が、ここでへこたれるわけにもいかない。