エピソード152
船から少しずつ離れていくと、やがて大きな通りに面した。馬車がたくさん往来している。そしてその向こうには、立派な建物がたくさん並んでいる。行ってみよう。
・・・しかし、馬車の行き交う大通りを渡ることすら、れいにはおっかなびっくり草臥れる作業なのだった。そしてまた大勢の見知らぬ人に怒られる。
立派な建物の1つに入ってみる。窓口には数人の人が並んでいる。お金をやりとりしているぞ。
客が大勢いるので、しばらく待ってみた。しかし、客は減っても次から次へと入ってきて、人だかりは小さくならないのだった。そしてれいは、「並ぶ」ということの必要性に気づいた。窓口に並ぶなんて、これまで体験したこともない。
そして列の後ろに立つこと5分、ようやくれいの番になった。
れ「あのう、東の大陸に行く乗船券が欲しいのですが」
店「ここは換金所だがね!」
れ「あのう、乗船券は」
店「だからここは換金所なんだよ。両替え屋だよ」
れ「では、チケットの店はどこですか?」
店「3つ隣だ!あと1分がんばって歩け!」
れ「あ、どうも」
20分も大人しく待機していたのに、怒られるだけで終わるのだった。
3つ隣の店まで赴く。なるほど、チケットオフィスと書いてある。
店内に入ってみると、造りはさっきの両替え屋と大差ないのだった。それならあっちでも乗船券が売れそうなものだが、そういうわけにはいかないのだろうか。
また列に並び、自分の番を待つ。そしてれいは、武器も防具も《ホイポイ》で仕舞った。ここでは武器を構えているととても浮くのだ。
ようやくれいの番になった
店「はいいらっしゃい」中年の女性はにこやかに笑っている。
れ「東の大陸までの乗船券をください」
店「東の大陸って、サマンオサで良いのかね?」
れ「え?サマン?」
店「東の大陸って言ったって幾つか港町があるんだよ。ここはサマンオサ行きの窓口だが。それでいいんだね?」
れ「あの、わかりません」
店「あたしはもっとわからないよ!どうすりゃいいってんだ」
れ「とにかく東の大陸に行きたいのです」
店「じゃぁサマンオサでいいだろう。
1人かい?3万ゴールドだよ」
れ「さ、3万ゴールド!?」
店「そうだよ。別に昨日今日値上がりしちゃいないよ。いつもそうだろ?」
れ「た、高すぎます・・・」
店「そうは言ったって、マケることなんか出来ゃしないよ。
遠ーくの大陸まで行って、個室が付いて、食事も7日分付くんだからさ」
れ「そんなに持っていなのです、私」
店「それなら買いにくるあんたが悪いじゃないか!
あたしがいじめたような顔しないどくれよ」
れ「す、すみません。
何かもっと、安い金額で行く方法はありませんか?」
客「おい!何をグダグダやってるんだ!」後ろの客も怒り始めた。
店「ほら、もうあっちにお行き!」
れ「何も知らないんです!情報だけでもください!」
店「じゃぁ貨物船でも頼ってみるんだね!」
店員がそう言うと、後ろの客が強引にれいを弾き飛ばした。
れ「痛い!」しかしもうこの店も頼れそうにない。
魔物と戦うよりも、しんどいような気がする・・・。
れいは気づいた。高級な品やサービスを求める人たちは、怒りっぽい人が周りにいても気にしないのだ。そし大金を儲けたい人々は、怒りっぽい人が周りにいても気にしないのだ。誰かに怒鳴られてでも、高級品や大金が欲しいのだろう。怒鳴られることに、慣れきっているのだろう。
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