エピソード181
するとようやく、サーヤが口を挟んだ。
サ「じゃぁまずは、私とのおしゃべりに付き合ってくださる?」
れ「えぇ」れいは昔サーヤが苦手だったが、彼女も少しは丸くなったと感じている。そして、れいに敵意がないことはもうわかった。
サ「お疲れかしら?それならどこかカフェに行きましょう。疲れていないなら、散歩しながら話したいわ」
れ「疲れていないわ」この国を散歩することは、とても楽しい。
二人は歩きながら話し始めた。
れ「サーヤも、一緒に天空城に来てくれるんでしょう?」
サ「私は行かないわ!」
れ「え、どうして?」
サ「先の展開が読めるからよ。まぁそもそも私はお呼ばれしていないけど。
付き添いだなんだってゴネれば潜り込めないこともないんでしょうけど、それをする気はないの。
先の展開が読めるからよ。面倒くさいことは御免だわ」
れ「先の展開って?」
サ「今私が、迂闊に話すことじゃないと思うけどね。
そしてあなたは嫌がらないと思うのよね。
私は、この国で人助けするくらいで丁度いいの。とりあえず今はね」
れ「どういうこと?」
サ「私、努力ってあまり好きじゃないの。でもそれがないと越えられない壁があるのは知ってる。
女王様が、強さだけでは天空城には行けないと言ってたけど、強さだって要るのよ実際は」
れ「サーヤだって強いでしょう?」いつの間にか、サーヤとタメ口で話せるようになった。
サ「そこそこ強いけど、あなたほどじゃない。あなたに追いつきたいとも思わないわ。
私、努力ってあまり好きじゃないの」
れ「努力せずに強くなってきたの?」
サ「・・・ちょっと長話になっちゃうかもだけど、聞いてくれる?」
れ「えぇ。あと10日で済むならば」
サ「うふふ。
・・・私、孤児でね。親の顔も知らないの。どっかに捨てられたのよ」
れ「まぁ!!」
サ「そこに同情は要らないの。別に傷ついても悲しんでもいないわ。
みんなと違うってことを、何を悲しむ必要があるのよね。
それで、お金持ちの人が拾ってくれて、サーヤと名前も付けてくれたわ。
なんか幼いときから、魔法の素質を見せたみたいでね。
私を拾ってくれた人は、高いお金を出して私をホグワーツって魔法学校に通わせてくれたの。寮の学校だったから、帰る家がなくても気にならなかったわ」
れ「サーヤ、魔法学校の出身だったの!」
サ「厚意で私を名門学校に入れてくれたのだから、私は真面目に学校に通ったわ。
昔はもっと素直な子だったのよ?・・・たぶん。真面目だったしね。
それなりに優等生だったけど、1番にはなれなかった。2番にも3番にも。5番くらいにはなれそうだなって思ったんだけど、それすらなれなかった。
どうしてかわかる?」
れ「どうして?」
サ「成績って、努力の量が比例するわけじゃないの。
色々とズルをする子が、いっぱいいたのよホグワーツには。
たとえば冬休みの研究課題とかね。私は自分で精一杯にやったわ。
でも周りの子たちは、実家に帰ってママやパパに手伝わせるのよ。それで立派な作品を作ってくるの。親が手伝った証拠なんてないでしょう?だから教師は、それをそのまま評価して、SSランクを付けるのよ。
でも子供たちはわかってるの。だって雑談の中でぶっちゃけてるからみんな。「ママに手伝ってもらった」ってね。でも先生には言わない。先生は知らない。
結局、そうやってズルをする子が特待生を取るの。
特待生しか授かれない魔法のイニシエーションとかもあるのよ。それは、一番頑張った私じゃなくて、ズルをした子がかっさらっていくの。
私、頑張ることがバカらしくなっちゃったわ。
根性がないのよ。あなたと違って」
れ「えぇ?」
サ「うふふ。あなたならね、きっと裕福な子の不正を見たって、腐らないのよ。
やさぐれずに、コツコツと努力を重ねて、そして自分なりに《メラゾーマ》の会得にまで至ってしまうの。または、《メラゾーマ》が使えなくたって《メラゾーマ》の使い手に勝っちゃうのよ。うふふ。すごいわ」
そう・・・なのかもしれない。
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