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エピソード187 『天空の城』

エピソード187


マ「まず・・・そなたを招待した一番の理由から話そう。


 魔王を、討伐してはもらえないだろうか?

 最初に言っておくが、そなたに断る権利はある。これはお願いにすぎない」

れ「魔王を!!

 私には到底無理なことです!」

マ「しかしそなたは、通りがかりでアレフガルドの竜王を討伐したではないか?

 それなら真の魔王とて倒せる可能性はある」

れ「!!

 魔王とは何者なのですか?それは60年前に滅びたのではないですか?」

マ「魔王は何度でも現れる。

 要するに、世界を支配したがる悪は何度でも現れる。

 現在最も厄介な悪は、魔王クシャトリア。地底に身を潜めているが、そろそろ活発に地上を攻撃したいようだ。その前に迎え撃ったほうが良い。地球の人類を滅亡したいらしい」

れ「それは大変です!」

マ「そうだ。だからそなたに討伐を依頼したいが、押し付けるものでもない。

 その目標を持つことは、そなたにとっても有意義ではないかと思って、天空城に招待をした」

れ「どういうことでしょうか?」


マ「色々とあるのだが・・・

 そなたは世界中の美しい風景を見たいのだろう?大きな情熱がある。そのために困難をもいとわない」

れ「はい・・・」

マ「そして、祖母ローズのような偉大な魔法使いになりたいのだろう?」

れ「はい・・・」

マ「色々と、一石二鳥なのだよ。

 討伐を拒否されるとしても、それでも呼んだ意味がある。

 天空の城を観光するなどというのも、そなたにとって楽しいだろう。そんなご褒美に終わるとしてもかまわないと思っている。呼んだ理由の1/3は、敬愛するそなたへのご褒美だ」

れ「はぁ・・・。あ、ありがとうございます」たしかにこんな絶景に招待してもらえたことは嬉しい!

れ「魔王の討伐を、前向きに検討しようと思います。

 しかしその前に、質問などをしてもよいですか?」

マ「もちろん。なんなりと」


れ「神というのは、何者なのでしょうか?

 旅をする中で知った事は多いのですが、神というものについては益々よくわからなくなりました。神様がたくさんいると、人々は言います。マスタードラゴン、あなたが神ですか?」

マ「実は私たちも、その詳細を知らない。

 神と呼ばれる者は多数いるが、そなたが言及したいのは『創造主』だろう。それについても私は、詳細を知り得ない。

 この惑星を創った創造主なるものが存在する話は、聞いている。

 そのような者がいるとして、彼はどうやら、あまり誠実な生き物ではない。誠実な生き物だったら、こんなにも大勢の悪を野放しにはしないだろうな。

 しかし彼には1つ、卓越したセンスがあると感じる。それは、『冒険を造るセンス』だ。この惑星は非常に地形の変化に富んでいて、高い山や深い海や、険しい鍾乳洞まである。そして色に富んでいる。穏やかな緑、鮮やかな花々、美しい海・・・。様々な人種が入り乱れ、様々な動物が徘徊する。わかり合えない人々の波をかいくぐって、美しい風景や美しい人に出会ったとき、心はこの上なく震える。その感動は、どんな本にもどんな紙芝居にも代替は利かない!

 少々の悪とも戦う勇気が芽生え、母の手を離れて安住の地を旅立ったとき、この惑星の真の魅力を見せつけられることになる!


 人は皆いずれは、『神とは何だろうか?』と疑問を抱く。その答えを宗教に求めるが、宗教の中には答えの断片しかない。


 それに気づいた者は、宗教を超えていく。


 『神とは何か?』その疑問を抱いた者にとって、旅という教材は最も的を射ている。旅する中で気づくだろう。この惑星がいかに面白い冒険の舞台であるかを」

れ「!!」言わんとしていることは、なんとなくわかる気もする・・・!

マ「もし魔王の討伐をしないならば、本を書きなさい。

 そなたが見たものの美しさを。楽しさを。自分の愚かさを、勇気を。

 絵本に描いたって良い。

 旅の体験を自慢するのではなく、読み手を『あなたも旅立ってごらん!』と誘(いざな)ってあげなさい。それはかけがえのない、人助けだ!」

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