エピソード21
れ「やったぁ!通行手形を手に入れたわ!」れいはご機嫌だ。これでサントハイムではない国までも遠出することが出来る。
さて、次なる国はどこにあるのだろう?情報が欲しい。
城を出ると、立派な馬車が数台、並んでいるのを見かけた。貴族たちがタクシーのように乗る馬車だ。
サントハイムに来る際に、商人の荷馬車に運んでもらって楽ちんだったことを思い出した。ひょっとして、馬車に乗って隣国まで行けるのでは?れいはそんなことを思った。
馬車の列に近寄ってみる。御者たちが世間話をしている。
れ「すみません。隣の国まで馬車に乗せてもらうことは出来ますか?」
すると一番端の御者がリアクションをした。
御「私の馬車が遠距離用ですけれども。
隣国のボンモールまでですか?所要時間は二昼夜、1万ゴールドで承りますが」
れ「1万ゴールド!!」目が飛び出るような大金だ。
れ「ご、ごめんなさい。失礼しました」
御者は貧乏人を見下すような目・・・をそっと隠して、上品にれいにお辞儀をした。
色々と恥ずかしいので、小走りで馬車の列から離れる。
50メートルも離れてふと振り返ると、参道を挟んだ反対側にも馬車の列がある。こっちは荷馬車だ。城に営業に来た商人たちの馬車だろうか。ひょっとしたら先日の行商人のように、「乗せてやる」と言ってくれるのではないだろうか?れいはそう思って、今度はこちらに近づいてみた。
こちらでも御者や商人が手持ち無沙汰でおしゃべりしている。「隣の国に行きたい」と話すと、「向こうの男がボンモールから来てるぞ」と教えてくれた。
れいはボンモール人であるらしき小柄な中年に話しかけてみた。
れ「あのう、ボンモールまで荷馬車の後ろに乗せてはもらえませんか?」
商「おぉ、あと2時間待てるならついでに乗せてってやれるぞ。
お代は5,000ゴールドだ!」
れ「え、お金をとるのですか!」れいはまた面食らってしまった。
商「当然だろう。馬車を運転する労力を舐めてもらっちゃ困る」
れ「でも、どのみちボンモールに戻るのですよね」
商「まさか高いとケチつけるつもりじゃなかろうな?
馬車商に依頼したら1万ゴールド取られるんだぞ?それを半額でいいって言ってやってんだから、優しいもんだろ」
れ「え、えぇ。そうですね」
れいは苦笑いをしながら、また小走りでそこを離れた。
れ「あのときの商人さん、優しい人だったんだわ」
距離がまったく違うにせよ、お金もとらず、偉そうな顔もせずに乗せてくれたテンペ村の商人は、ボンモールの商人とは大きく気質が異なるようだった。
比較する対象を得ることで、誰が優しいのか、誰が偉大なのか、気づくものだ。
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