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エピソード3『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』

エピソード3


ゆ「・・・ふぅん。

 じゃぁテレビゲームのあるその部屋から抜け出せばイイだけじゃない?」

ハ「そうじゃねぇんだってば!

 テレビゲームから離れたって、何者かに統率されているかのようなこの妙な違和感は消えない。

 この世界を覆う得体の知れない闇の霧から、オレは抜け出したいんだ!」

な「ねぇその台本なんていうアニメ?」

ハ「台本じゃねぇ!」

ゆ「じゃぁ、この世界から抜け出せたら、何がしたいの?」

ハ「この世界を脱したら?

 勉強と仕事のない世界で、ずっとMMOゲームやってるんだ!」

ゆ「はぁぁ、頭痛いわ(汗)」


ハヤトという少年は、何不自由ない人生を送っていた。

家庭は金持ちで、テレビゲームや流行遊びをすることを親は特段止めず、そのためのお金は潤沢に与えられていた。

しかしそれでもハヤトは、「ここから抜け出したい」という得体の知れない不満を抱くのだった。



2日後は日曜日だった。

ななが起きると、ダイニングテーブルに置き手紙があった。

「今日は両親で出かけます。

 昼食は一人でどこかで食べてきて。

 夜には戻ります」

な「ふぅん」

ななは少し考えて、Cafe『水平線』に行くことにした。


な「うわぁ・・・!」

ななは息をのむ。

カウンターの壁に、今日は大きなタペストリーが飾ってあったのだ。

後ろ姿の爽やかな少女が、丘の上の木の根元から、広大な風景を見渡している。

ななはその絵に吸い込まれ、今日は思わずカウンター席に座ってしまった。

な「すごぉーい・・・!」

店「フフ。最近仕入れましてね。見事な絵でしょう?

 ちょっと周りのテイストと合わないから、近々楽器や何やらのディスプレイのほうを模様替えしようかなとは思ってますが・・・」

な「そういえば、昔はちょっと違う楽器が飾ってあったような?」

店「フフ。よく覚えていますね。

 お父さん、お元気で?」

な「え!パパのこと覚えてるの?」

店「えぇ、お嬢さんのことも。もう5、6年は前ですか?

 『小指が短い』と言って、ケーナが吹けなくて泣いていらした。指で抑える必要のないサンポーニャを手渡したら、えらく喜んでいましたね」店主はニコっと笑った。

そういえば、そんなことがあった気がする・・・!

これまでずっと、そんなことはすっかり忘れていた。



数日後の昼下がり。

ななはそう憂鬱ではなかったが、なんとなくまたあの喫茶店に行きたくなった。

すると驚いたことに、いつぞやのゆなが本を開いて喫茶店でくつろいでいるではないか。

な「ゆなさん!どうしてこんなとこに!?」

ゆ「あらぁなな!

 どうしてって、私は結構ここの常連さんよ。

 全面禁煙の喫茶店って少ないでしょ?私、タバコの煙嫌いなんだもん」

店「ふふふ。私もタバコが苦手なものでしてね。

 変わり者のカフェマスターですよ」

店主はななにおしぼりとメニューを持ってきた。

な「こんにちわぁ」ななは店主にささやかに挨拶をした。少し親しみを感じるようになった。

そうして二人がくつろいでいると・・・

カランカラン。

「ちぃーす」なんと、ハヤトだ。

ハ「おぉ!?いつぞやの!」

ゆ「なんでアンタがこんなとこ来るのよ!?」

ハ「いやー、テンション上がるもんでね!」

な・ゆ「は??」この一際静かな喫茶店で、テンションの上がる者がいるのだろうか?

ハ「ほらここ、なんか民族音楽みたいの流してるだろ?

 コレ聞いてるとさぁ、ゲームの町づくりがはかどるんだよ!」

店「想像力を刺激したいなと、ひそやかに企んでますよ。ほほほ」

店主はハヤトにおしぼりを持ってきた。

な「変な音楽にも意味があったんだぁ」ななは遠くを見つめた。


ハ「えぃ!この!クソ!」

ハヤトは擬音を叫びながらゲームに白熱している。

ゆ「ちょっとぉ、うるさいわよ。

 ていうか何で同じテーブルに座るわけ?」

ハ「いいじゃねぇか、同志だろ?えぃ!えぃ!」

ゆ「はぁあ。それはそうとして、静かにしなさいよ!お店に迷惑でしょ!」

店「はは、良いんですよ。

 ここは夜にはジャズバーに変わります。中年たちが楽器を弾いてドンチャンやってるんですよ。

 昼間は静かな客が多いですがね。静かでなくちゃいけないとは思っていないんです」

ハ「ほら見ろ!オレが正しい!」

ゆ「私は勉強してんのよ!

 静かにしてほしいもんだわ」

ゆなはハヤトから強引にポータブルゲームを取り上げた。

ハ「バカっ!何すんだよ!」

な「ゲームは1日2時間までですよ!」ママの声真似をして言った。

ハ「バカやろう!オレからゲームを取り上げたら退屈すぎて死んじまうぜ!」

な「カッコつけても、ダサいセリフぅ」

プチっ!ゆなはテレビゲームの電源を切ってしまった。

ハ「あーー!!このやろー!」

な「あははははぁ~」

ゆ「他のことで退屈しのぎしなさいよ」

ハ「他っつっても、コントローラーより重いもん持てねぇし」

ゆ「運動不足過ぎよ!!」


ハ「そうだなぁ」ハヤトはつまらなそうな顔で両手を頭の後ろで組んでいる。

ハ「キャンプにでも行くか!」

な「昨日の『ひゅるきゃん△』見たのー?」

ゆ「行ってらっしゃい!」ゆなはノートでシッシッとハヤトをあしらった。

ハ「お前らも一緒に行こうぜ?」

な・ゆ「えぇ?男の人にナンパされても着いていくなって言われてるしぃ」

ハ「どっか行きたいんだろ?オマエらだって!」

ゆ「そうだとしても、あなたと一緒には行かないわ」

店「ははは、キャンプは良いものですよ。

 女の子にもたしなんでもらいたいものです」

ゆ「ちょっとぉマスター、この男の味方するんですかぁ?」

店「ははは。私は誰の味方もしません。永世中立国家なんですこの店は」

な「えいせい?」

店「何の思想も持たない、という意味ですよ。ははは。

 この楽器はヒンドゥー教の国の楽器で、この楽器はイスラム教の国の楽器です」

店主は壁の楽器を指さしながら言った。

な「旅かぁ。いいなぁ」

ハ「だろ?家と学校を往復する日々なんて刑務所みたいなもんだぜ!」

な「ハっ!?」ななはその言葉にハッとした。


その時だった。


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