エピソード36
ヨ「はっはっは。おかえりなさい」
なんと草むらでは、塔のことを教えてくれた学者のヨーダが、野草の採集をしていた。れいを待っていたようだ。
ぽかーん!
ヨ「はっはっは。よく戻ってこれたのう。
しかも空から。
お嬢ちゃんはメラしか使えないと言っていた。
きっと、1階か2階を詮索したらもう息切れして、歩いて帰ってくるだろうと思っとったよ。
魔物の大群をかいくぐり、《そらとぶ靴》を引き当てて空から帰ってくるとはのう。
立派なもんじゃ!」
れ「体が、空を飛びました!」
ヨ「だから言ったじゃろう。
瞬間移動の魔法が、昔はあった。
その靴は、その魔法の試作品みたいなもんじゃ。塔からこの町まで人を飛ばすくらいのことは、この町の前の学者にも成功したらしい。ほっほっほ」
改めて草原に座り込んで、れいは続けた。
れ「塔の試験を、突破出来たというのとも違うんだと思います。
自分のチカラじゃなくて、助けてもらってどうにかなりました。
弱点を、今のうちに直しておきなさいと言われました」
ヨ「ふうん。
自分の弱点を、何だと分析する?」
れ「まずは、まだ使える魔法が弱いことです。でもそれは冒険する中で、底上げできるものだろうと思います。
もう1つの弱点のほうが、放っておくとまずいと思いました」
ヨ「というと?」
れ「魔力のスタミナが圧倒的に弱いと思います。
他の新米魔法使いと比べて弱いのかはわかりませんが・・・少なくとも『一人旅を続けていく身』としては、スタミナが少なくて問題だと思いました」
ヨ「正解じゃろうな。賢いよお嬢さんは。
技の派手さに盲目せずに、基礎的なことに目をやっている。
本当に強くなりたいならば、スタミナを鍛えねばならん。
他の冒険者たちが3人4人で手分けしているものを、お嬢さんは一人でこなさねばならんのじゃから、魔力だけでなく体力も、剣を振るスタミナも、相当必要になる。
ほっほっほ。焦らんことじゃよ。冒険を焦らんことじゃ。
どんどん次の町や土地に行こうとはせず、町ごとにゆっくりするんじゃ。たくさんの魔物と戦って経験を積み、スタミナも知識も積み上げていきなされ」
れ「魔法を撃てば撃つほど、魔力のスタミナも付くのですか?」
ヨ「否。戦うことでも魔法体力は付くが、それだけでは不充分じゃ。
座禅瞑想をしなされ」
れ「座禅瞑想?」
ヨ「そうじゃ。わかるか?
精神集中の修行の1つじゃな。
じっと座って、目を閉じて、心を鎮める。日に30分は行うべし。
その何の意味も無さそうな行為に、実は霊感上昇の秘訣がある。
強くなろう、敵を倒そうと血気盛んな奴には越えられない壁じゃ」
れ「やってみます!」
続いてれいは、塔から持ち帰った収穫品を整理してみた。
《鉄仮面》、《ブーメラン》は自分は使いそうもないので売却だ。
ゴールドは1,000ゴールドを入手できた。
ウサギの靴はイムルに着いたらもう消えていた。
実用性がありそうなのは、《祈りの指輪》1つだった。
これは何なのかヨーダに尋ねてみると、使うたびに魔力を少し回復できる代物だった。何度か使うと壊れてしまうらしい。町の近くの戦闘訓練中に使うようなものではなく、洞窟の最深部で魔力が枯渇したときなどに使う。魔力スタミナをアップするまでのお守りになりそうだ。
もうちょっと何か、収穫品によって見た目が派手になるかなという期待もあったのだが、まぁいいだろう。宝探しのために行ったわけでもない。
所持金が3,000ゴールドを超えたのは大きな収穫だ!