エピソード43
各々は、日に50ゴールド前後を稼いできた。4人で200ゴールド。
稼ぎの効率で言えば、戦闘を重ねたほうが速く済みそうな気もしたが、「この生活も悪くないな」と4人は思った。
互いは互いに、仕事の中で作った商品を持ち帰ったり、今日の出来事や気づき、出会ったヘンな人の笑い話など持ち帰り、宿のテーブルでシェアし合うのだった。それもまた面白かった。一度に4つの仕事を体験しているような気分にもなった。最初の1週間ほどは特に、各々に話すことはたくさんあった。
ななは美味しいケーキやキッシュなど持ち帰り、そのおかげで一行の食費は少し浮いた。ぜいたく費も浮いた。
ゆなはブーケや花を持ち帰り、宿屋はどんどん華やかになってしまった。
キキに持ち帰れる物質はほとんどなかったが、芝居の内容や客たちの噂話などを、3人に話して聞かせた。また、休みの日には3人もタダで芝居が観覧させてもらえるようになった。
アミンの収穫はまことに多かった!
仕事の廃材で、空いた時間に簡素な防具など作っては、仲間へと持ち帰った。若い女3人は無骨な防具を装備したがらなかったが、ファッションの邪魔にならない範囲で装備できる防具もあった。足元は頑丈な革靴で身を固められた。
4人には、会話をする時間もたくさんあった。
ある日は、ななとキキが熱く語り合っていた。
キ「ねぇ、ななは声の役者さんになりたいんでしょう?
アイドルのように可愛い姿が演じたいの?
それとも、シリアスな脚本とかも演じてみたいの?」
な「うーん?まずはアイドルみたいにかわいいことしたい♪
でもいつかは、シリアスなお芝居とかも出来るようになりたいなぁ」
キ「そっか、シリアスな脚本にも興味はあるのね」
な「えへへ、こんなキャラじゃムリかもしれないけどね(汗)」
キ「ずっと笑っていたいわけでもないのねぇ。
ねぇ、あなたも瞑想をしてみてはいかが?」
な「えへへ、瞑想ってやってみたこともあるけど、わたしすぐ寝ちゃうんだよね(汗)」
するとキキからは、意外な答えが返ってきた。
キ「いいのよ寝ちゃったって♪」
な「え、いいのぉー!?」
キ「寝ちゃったっていいから、やってごらんなさいよ。
夜寝る前と、朝起きたときと。
夜寝る前は、そのまま快眠しちゃえば好都合ってことで♪
朝は眠くなっても、わたしたち起こしてあげるから」
「寝てもいい」と聞くと、ななにもハードルがぐんと下がった!
最初はやはり10分で眠りに落ちてしまったが、続けていくうちに20分、30分と起きていられる日も増えてきた。
ななも魔力が上昇し、そして、性格や思考に少し落ち着きが出てきたのだった。
1か月も過ぎた頃、4人はそろそろ飽きを感じていたが、目標額にはまだ数百ゴールド足りない・・・
すっかり仲良くなった宿の店主になんとなしに状況を話すと、なんと店主は一行に、足りない数百ゴールドを工面すると申し出てくれた!
ゆなが持ち帰ったブーケで宿が華やぐと、宿泊客が増えたのである!「だからこれは宣伝費だ」と亭主は笑った。
また、ななは持ち帰ったケーキを店主に分けることがあったし、キキは親戚の子のように可愛がられていたし、アミンも役に立つ小物を店主に差し出したりしていた。
お金の貯め方は色々ある。
モノの獲得方法は色々ある。
ゆなとななは痛感するのだった!
ヒヒ―ン!黒くツヤのある立派な馬が、上機嫌に啼いている。
一行はついに馬車を手に入れた!
4人が乗ってもまだ少しゆとりがあり、雨も防げる幌馬車だ。
「・・・で、誰が運転するの?」
まぁアミンが運転するのが、色々な面で最も妥当だろう、という結論になった。しかし、協力的で好奇心旺盛な面々は、時々代わる代わる御者に挑んだ。
アミンは世話になった鍛冶屋から、古い鉄打ち道具を譲り受けると、馬車の隅に乗せた。「カチンコチンの鉄を打つ」という目標を、店を離れてもまだ続けたいのだ。
余談だが、オリハルコンという素材は、後にアミンが世界で一番初めに生成に成功した者となった。
「神から与えられし金属」と噂されるが、それを創ったのは神ではなく妖精だったのだ。そして、寿命の短い人間には打つことが出来ないゆえ、これは伝説級の素材となった。
さて次はどこに行こう?何を見に行こう?
4人には無数の選択肢が広がっていた!馬車があるので遠くまでも行ける。なおさら無数に選択肢は広がった!
オラクルベリーに滞在する中で、町人から得た幾つかの情報。一行はその中で、「近くの城の女王が何か困りごとを抱えている」という噂を耳にした。それを助けに行くか。
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