エピソード57
一行はワイズの家に戻った。
セーニャは寝ずに、震えながら待っていた。
ワ「セーニャ!旅のお方がお前の命を救ってくれたぞ!」
セ「なんと!
ありがとうございます!ありがとうございます!」
デ「礼には及ばない。早く眠りたいだけだ」
セ「デイジー様!
民族衣装をお召しになると、お姫様のように美しゅうございます!」
れ「本当にそうだわ!」
デ「美しいという褒め言葉は、オレはもう欲していない。
ところで、おまえたちの里の民族衣装は魔力が全くこもっていないな。
少しは魔力を込めて織り物が出来るようになったほうがいい」
セ「魔力など、私たちの民は使えないのです」
デ「座禅瞑想をするんだな。
そしておまえにも言っておく。この村の男はアテにならんからな。
この里は、農業をやるべきだ。そうでないとまた他の魔物にそそのかされるぞ。
またはカネを運んでくる商売人や旅人にそそのかされてしまう。
食べ物は農業で自給するんだ。すぐには無理だろうが、その努力をするんだ」
セ「はい。肝に銘じておきます!」
生きながらえたこの命、これからは里の発展のために捧げようと、セーニャは心に誓った。
翌朝。2人はもう出発しようとしたが、セーニャがそれを引き留めた。
セ「わたしに色々なことを教えてください!」と。
2人はそれを承諾した。
れいがまだ15歳だとわかると、セーニャは俄然学ぶ意欲が増した。出来ることの数に差がありすぎるのは、やはり悔しいし悲しい。
結局2人はこの里に2週間も滞在した。
農業の基礎だけでなく、戦い方や魔法のこと、世界のこと・・・様々なことをセーニャに教えた。
「農業に取り組むべき」という助言に対して、まゆをひそめる里人も少なくはなかった。その怠惰が悪魔の誘惑を引き起こすと諭しても、理解しない。
しかしセーニャに追従したがる里人も少しはいた。
れいは、夜にはロウソクに灯りをともしながら読書に耽る。
僧侶は僧侶で、魔法使いと同じくらいたくさんの魔法を習得するらしい。《ホイミ》だけではないのだ。
仲間を守ったり、補助したりする効果の魔法を中心に習得する。
《キアリー》 解毒をする魔法
《キアリク》 マヒを解除する魔法
《スカラ》 味方一人の守備力を上げる魔法
《フバーハ》 仲間全体の、魔物の吐く炎や吹雪のダメージを軽減する
《マジックバリア》 仲間全体の、魔法攻撃のダメージを軽減する
敵をかく乱する類の魔法は、魔法使いが習得したり僧侶が習得したり、まちまちだ。
こうした間接攻撃の魔法は、効かないこともある。また、強い魔物ほど効きにくい傾向がある。
《マヌーサ》 敵に幻惑を見せ、攻撃をミスしやすくさせる。
《ラリホー》 敵を眠らせる。
《マホトーン》 敵の魔法を使えなくする。
《ルカニ》 敵の守備力を下げる。
《メダパニ》 敵の頭を混乱させ、同時討ちや行動不能を誘う。
れいにはいよいよ見たことも聞いたこともない魔法ばかりで、これらを学習するのはとても大変そうに思えた。
しかし初級の魔法使いや僧侶が習得するものもあるようで、負けてはいられない。