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エピソード68 『天空の城』


エピソード68


そしてその割け谷の中間あたりに、関所があった。

ここからはハーメリアという国の領土になるらしい。

兵「こんなところを冒険するのか?珍しいな」と、サントハイムの国境よりも随分と呑気な兵士たちに出迎えられた。同じ国境でもこうも違うのか。国境兵士の顔の怖さは、治安に比例するのだろう。


荷馬車の女は話好きで、会話はどんどん盛り上がった。

デイジーは、伝説の武器を探してさすらっていることを告げた。

すると女は面白いことを言った。

女「この山の、こっち側の国のどっかに、大きな洞窟があるんだよ。いや神殿かな。

 例のアイゼンって戦士が作った神殿なんだ。

 『戦士の神殿』って呼ばれてて、すごい手強いらしいが、なんか戦士にとってのお宝が眠ってるらしいよ。

 あんたの探し物もそこにあるんじゃないのか?」

デ「面白い話だな。

 オレの目当ての品が洞窟の宝箱にあるとも思えないが・・・」

女「あんたの剣よりすごいのがあるかもしれないよ!ははは」

デ「その可能性はある」そして難易度の高いダンジョンなんて、刺激的だ。


デ「れい、ここらでお別れしよう。

 オレはその洞窟を探す。

 れいには荷が重いと思われる」

れ「そう、ね・・・」

れいは寂しそうに同意した。

デ「次の町で、別れることとしよう」

割け谷を抜けた。視界が大きく開けた。地平線の向こうまでまた荒野が続いている。

れ「良かった。しばらく町は見えないみたい」

女「いや、もう着いちまったよ」

そう言うと、あごで左手側の背後を指した。

え!?二人は振り返る。

すると、山肌に張り付く大きな町があるのだった!

大きいが街ではなく町だ。小さな家ばかりが密集している。

しかしその家々はとてもカラフルに着色され、ユニークな景観を作っていた。

女はその町のたもとに馬車を停めた。


急な別れに、れいは戸惑う。

しかし抵抗すべきでないことだけはわかっていた。

わがままを言ってはいけない。着いていっても絶対に足手まといになる。

寂しさの涙を懸命に押し殺す。しかし言葉も出ない。

デイジーが先手を取った。

デ「またどこかで会おう」デイジーは微笑みながら、れいに握手を求めた。

れ「えぇ。きっと。実際にこの世界のどこかで再会するなんて天文学的な確率だけど、『またあなたに会いたい』って気持ちは確かなものだわ。私にとっても」

デ「いいや。そうでもないんだよ」

れ「え?」

デ「なぜか旅人たちは、偶然ぱったりと運命的な再会を果たしたりする。

 オレは神など信じちゃいないが、旅の神様みたいのはいるような気がしている。

 旅人と旅人を再会させる、妙なチカラがあるように思える。

 ふふ。じゃぁな」

それだけ言うとデイジーは、一度も振り返らずに歩いて行ってしまった。

れいはしばらく、デイジーの後ろ姿を眺めていた。

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