エピソード70
少し落ち着くと、れいは町歩きに出ることにした。
女主人はれいに、「マーレのホームステイ」と書いたメモ紙を渡した。
マ「あたしの名前を憶えておくんだよ。
それと、暗くなる前に帰っておいで。
夕飯はうちで出してやるから。食堂はこの町には少ないよ」
家壁がカラフルなだけではない。この町の路地は複雑に入り組んでいる。区画整理もせずに適当に家を増やしていき、その隙間に道路を敷いたのだろう。絵画に満ちた迷路である。それはそれで面白いのだった。
しばらく歩くと、庭にたくさんの武器が散らかる家があった。もしや?と思い、覗いてみる。
れ「ここは武器屋ですか?」
武「そうだよ。お嬢ちゃんは冒険者か?」
何か武器を新調したい頃だ、とれいは思った。武器は思いのほか色々とあり、しかも見たことのない、強そうなものが並んでいる。
《モーニングスター》のような変わり種も悪くはないのだが、また剣に戻りたいな、とれいは思った。そして一本の美麗な剣に惹かれる。
武「おぉ、それはなかなかいいぞ。戦士たちは誰もがそれを通る。
《破邪の剣》と言ってな。格好いいだけじゃないんだよ。敵を前にして振りかざすと、なんと《ギラ》の魔法が炸裂する!魔力を消耗せずに、《ギラ》が使えるんだぜ」
そんな夢みたいなことがあるのか!と訝しげたくもなるが、れいはイムルの塔にて《マグマの杖》が《イオ》の魔法を発動することを体験している。杖でなく剣がそういう効果を発揮したっておかしくはない。
格好いいし、凄いぞ。たしか《ギラ》というのは複数の敵に炎を放てる魔法だ。デイジーが居なくなった今、魔力を消費せずに複数の敵を攻撃できるのは心強い。
れ「でも高価なのでしょう?」
武「高いが、そうでもないぞ。4,400ゴールドだ」
れ「払えるわ!」れいの手持ちは6,000ゴールドほどあった。
武「良かったな!
・・・いや、ホントに良かったよ。
それを買わないにしたって、この辺りを冒険するならその価格帯の武器は必要だろうな。買えないんだったらこの辺りで魔物倒して、金策してくる必要があるだろう」
武器屋は良いアドバイスをした。れいは改めて、難易度の上昇に気を引き締めることが出来た。
れいは《破邪の剣》を購入した。格好いい。なんか勇者になったみたいだ。
武「要らない武器があるなら買い取るが?」
そうだ。何か売れるものがある気がする。
《青銅の剣》はもう間違いなく要らないし、迷ったが、《モーニングスター》ももう手放すことにした。
れ「防具屋もこの町にはありますか?」
武「何軒かあるぞ」
れ「どうもありがとう」れいは笑顔を添えてお礼を言った。
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