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エピソード73 『天空の城』

エピソード73


朝起きると、マーレは朝食を作ってくれた。食べきれないほどの量だった。

「もう何日かお世話になるかもしれない」とマーレに伝えて、れいは外出に繰り出した。

新しい町、新しい武器。この町の周辺でも少し戦闘訓練を重ねるべきだとれいは考えた。デイジーが居なくてもさすらえる戦闘能力を培わなくては。

その前に教会だ。冒険の報告をしようと思った。

同じ様な民家ばかり並ぶこの町にあって、教会はわかりやすい。大きな尖塔を持つからだ。あれはおそらく教会だろう。

行ってみるとやはり教会だった。この町らしく素朴な建物ではあるが。そして教会の壁にすら誰かがラクガキをしているのだった。


れいが教会に入ると、なんと神父のほうが驚きながら口を開いた。

神「おぉ神よ!こんな私にまさか女神を遣わしてくださったのですか!

 やはり私の考えは正しいのでしょうか!?」

れ「え、えっと・・・?」勇者の次は女神か。

すると若いシスターが、神父を慌ててたしなめる。

シ「もう神父様!その考えはもうお忘れくださいまし!」

れ「私はただの冒険者です」

れいはここ数日の旅の模様を神父に話して聞かせた。原住民族の里に驚き、デイジーと別れて悲しいが、下を向きはしないぞ、と。

神「なんとも素晴らしい冒険者です。女性でありながら。

 やはり私のために遣わされたのでしょか・・・」

れ「何を言っているのですか?」

神「私の胸のうちを、聞いてくださいますか」

れ「えぇ。私でよろしければ」立場が逆転してしまった。


神「私は神父です。まぁ人並みの信仰活動をしてきたつもりです。

 神の教えを学び、それを人に説いてきました。

 人に説くことは、学びをさらに深めます。何度も聖書を読みますし、咀嚼しようとしますからね。

 すると・・・どうにも神父という暮らしは、魂修行の最後ではないと思えるんです」

れ「では次に何をするんですか?」

神「信仰に篤い神父は、旅立つべきなのではないかと、思うのです」

れ「えぇ!」

シ「もう神父様!そんな寂しいことをおっしゃらないで!」

神「だって救世主は、どの宗教においても、平穏を捨てて旅に出ています。

 そして彼らは言います。『私のようになりなさい』と。

 人生とは、霊魂を知って布教をして終わりではない。

 自らの成長のために、知らない土地に旅立って、心も体も鍛えるべきではないかと」

シ「神父様!あなたはもう充分にご立派ですのに!」

神「それであなたに、れいさんに頼みがあるのです。

 どうか私を、知らない町まで連れ立ってくださいませんか?

 弱い神父。一人旅は無理があるものでして」

れ「えぇ!?」そんなのは無理だし、引き受けられない!とれいは思ったが、しかし・・・思い直した。そうして未熟な自分も、デイジーに支えられて強くなったではないか。自分もまた、デイジーと同じ様な人助けをすべきなのではないか?と。

れ「えぇと。どうしましょう。

 すぐには決められませんが・・・」

れいは前向きに検討しようと試みる。

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