エピソード89
大臣が試合の結果をまとめる。
大「戦士の用心棒はれい。
魔法使いの用心棒はサーヤ。
以上に決定する」
れ「選ばれることが出来たわ!」
サ「《いかずちの杖》はいつ頂けるのかしら?
それと、用心棒は2人だけど、《いかずちの杖》は2本もあるの?」
大「おぉ。重要事項であるな。
《いかずちの杖》は成功報酬となる。王子の儀式が済んだ後じゃ。
残念ながら1本しかない。
用心棒として最も活躍した者を選択するか、または二人で話し合うがよい」
サ「1本しかないですって!しかも成功報酬!?
なんだか裏切られた気分だわ!」
1本の伝説の武器を2人で取り合えと?冒険者同士の仲違いを狙っているのだろうか。
れいは何も言えなかった。「どうぞ」とも言えないが、奪い合いたくもない。
大「それでは王子の儀式へと出発する」
れいとサーヤは着いてまいれ。
所定の近衛兵4名は戦闘と馬車の支度を整えよ。
サ「もう出発するの?まぁいいけど」
れ「よ、よろしくお願いします」
サ「どうも。
仲良くしましょうと言いたいところだけど、あなた、何考えてるかよくわからないわ」
たしかに、あの戦闘を見たらそう思われても仕方ないだろう。
チャゴス王子は、表面上は大人しくしていた。
手合わせの最中に逃げだしたり騒いだり、周囲を困らせるようなことはしなかった。父親がそばにいると猫を被るのだろうか。
しかし表情は穏やかではなく、苦い薬を飲まされた子供のように終始イライラとして、貧乏ゆすりなどしているのだった。
れいが手合わせに勝つと、れいのところにも寄ってきて声を掛けてくる。
チ「なんだ。昨日の子じゃないか。
やっぱり俺に近づくために来ていたんじゃないか」
れ「あ、いえ、はい」
れいはこの男にどう対応していいのかまったくわからない。
支度を待つ間に、れいは王様に近づいた。
れ「王様。どうか城壁の外までお見送りに出てはいただけないでしょうか?」
王「おぉ。元よりそのつもりであるぞ」
王子とのその一行は、兵士の練習場のそばの城門からひっそりと城壁を抜け出ていった。
王様や周りの者たちは、外まで見送りに出る。
城壁を出て平野が広がった。皆はガチャガチャと鎧を鳴らして、勇ましく行進する。
れいは、大臣に耳打ちをした。
れ「ところで大臣様。
このご依頼、王子様のみを護衛すればよろしいのでしょうか?
それとも大臣様もお守りいたしますか?」
大「そうだな。わしの護衛もお願いしたい」
れ「失礼な言い方ではございますが・・・
大臣様はあまり戦闘能力をお持ちでないということですね?」
大「そうじゃ。わしは政策担当であるからな」
れ「わかりました。
お守りするために名案がございます」
そう言うと、れいは《聖水》を取り出した。
れ「《聖水》を振りかけますと、魔物が寄ってきづらくなります」
れいは《聖水》のフタに手をやる。
大「ま、待て!」
大臣は異論を示した。が、れいはそれを無視した。《聖水》のフタを開け、そして大臣の頭から《聖水》を振りかける。すると・・・!
ジュワーー!
なんと、大臣の髪の毛や体が、煙を出して少し溶けた!
大「うくぅぅぅ!
無礼者!何をする!」
兵「れい殿!一体何をなさるのですか!」
れ「これは単なる《聖水》です。
おかしいですね。
《聖水》を掛けて体が痛むのは・・・」
れいは語気を強めた。
れ「魔物だけであるはずですが!」
大「貴様ぁー!
このわしを愚弄しおってぇ!!」
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