CHAPTER 13
やがて一行の足取りは重たくなった。
魔物との戦闘に疲弊したからではない。眼前に、焼け野原となった城が見えたからだ。
今も城はねずみ色の噴煙を上げ、一般人の訪れを遠ざけている。
3人は意を決して、城への潜入を試みた。
残り火がパチパチとくすぶりながら噴煙を上げる以外に、どうも気配がする。
ミ「ローレ様、サマル様、口に布を当て、なるべく煙を吸わないようにご注意ください!」
ロ「誰かー!生きている者はあるかー!」ローレは一縷の望みを託して精いっぱい声を張り上げた。
しかし、気配の正体は城の民ではないのだった。
まじゅつしが2匹現れた!
サ「やはり!残党がくすぶっているか!」
二人は魔物と戦いながら、さらなる残党のうごめきから生存者の可能性がさらに低いことに絶望していた。
誰かを探すためではなく、大きな墓となったこの石の塊を安らかな寝床とすべく、残党の殲滅に熱中した。
城の中まで歩く。エントランスには誰もいない。玉座にも人影はない。
サマルは、昔この城に訪れたときの記憶をたどった。
サ「たしか、台所が地下にあるんだ」
ロ「もしや!?」
一行は台所へ続く地下階段を探した。
城の左奥、従者たちの家事場のフロアの隅に、厳重に閉じられた地下室への扉を見つけた!
ミ「やったぁ!!」
ロ「油断するな!
この奥も魔物の手中かもしれない!」
ローレは慎重に、地下室への扉を開けた。
ガサガサ!何かが動く音がした。
3人は恐る恐る階段を降りる…。
ランタンを照らす。
台所の奥、タルの影で何か生き物が震え、周囲がカタカタと振動している。
ロ「何者だ!」ローレは大きな声で叫んだ。
ガタガタ!声に驚いたかのように物音と震えが大きくなった。
?「………ひ、……ひと…?」
タルの影から、美しい少女が姿を現した!!
ロ・サ「ムーンブルクの王女か!!」
3人は駆け寄った!
ム「あなた方は…?」
サ「サマルトリアから援軍に、いや、救助に駆け付けました!
王女は生きていると、妹のシャロンは言いました!」
ム「シャ……ロン。サマルトリアの姫…?」
ムーンブルクの王女は、すべてを察知し、安堵した。安堵したからこそ、なよなよと崩れ落ちそうになった。
サ「気を確かに!」サマルはしっかりと王女の両肩を支えた。
ム「町が…。近くに町があります…」
王女はそれだけささやくと、やはり力をなくし気を失ってしまった。
ミ「一酸化炭素中毒だわ!すぐにここから運び出しましょう!」
一行は王女を担いで城を出た。町はどっちだ?風上の方向にたしかに町が見える。
襲撃を受けていないばかりか、噴煙の被害も少ないようだ。3人は気力を振り絞り、町までの避難を急いだ。
ムーンペタの町。
真っ先に宿屋を探し、ムーンブルクの王女をベッドに寝かしつけた。
ミ「じきに意識を取り戻すと思います。
脈はあり、栄養状態も悪くありません。食料の摂取は出来ていたと思われます」
ロ・サ「良かった!」
3人もしばし、宿で休むことにした。
15歳の少年たちにとって、とても長い、長い長い旅だった。
『転生したらローレシアのメイドさんだった件』