CHAPTER 16
その日も一日、休養に充てることとなった。
もう先を急ぐ旅でもなく、彼らに行動を指示する者もいない。
15歳の少年たちは、自分で考えて明日を決める。そしてその目的は魔王の討伐である。
究極の自由を背負いながら、究極の重責を背負っている。
彼らは幸せなのだろうか?彼ら自身は、己が幸せかどうかなど考えもしないのだった。
しかし、1つだけ共通して思っていることがあった。城の中で単調な日々を過ごすよりは、明日のゆくえもわからぬこの旅を愛している。
一行はのんびりとムーンペタの町を散策した。
リリザよりもいくぶん大きな、にぎやかな町であった。
宿屋のカウンターの横には「ふくびき所」なるものもあった。何だこれは?
道具屋で買い物をすると、時々《ふくびき券》が貰えるらしい。それを持ってここに来て、ガラガラとふくびきを回す。町民たちのちょっとした娯楽だ。
ローレは「くだらない」と思ったが、その考えは必至に自分でいさめた。これくらいの娯楽を許す心のゆとりを持たねば。
武器屋を覗く。まずはムーンブルクの王女の装備を整えるのが先決だ。
魔法使い向けの《まどうしの杖》を買い、そして《みかわしの服》を買い与えた。
魔物は一層強いので、男たちも装備を新調したいところだが、お金は王女の装備新調で底をつく。
しばらくレベル上げとお金稼ぎをすることが決まった。そして、互いの性質を知りチームワークを高めることにも取り組む。
城から魔王軍を追い払ったことで、まじゅつしや毒々しい魔物はいなくなったが、今度はマンドリルという野蛮すぎるサルや、リザードフライという炎を吐いてこちら全体を攻撃する巨大なハエに苦戦することとなる。
回復魔法の使い手が3人もいれば苦戦はないかと思われたが、マンドリルに1発殴られるだけで各々は致命傷を負うのであった。
やがてムーンのレベルが上がり《バギマ》を覚えてから、戦況は好転する。敵全体に40前後ものダメージを覚える中級魔法の脅威に、パーティ全体は興奮するのだった。マンドリルに殴られないためには、先に倒しきるしかない。3、4匹集団で現れるとそういうわけにもいかないが。
しばしのレベル上げを経て、再び武器屋を覗く。
ローレは《はがねのつるぎ》に、サマルは《てつのやり》に新調だ。立派な戦士らしくなってきた。
お金に余裕の生まれたムーンは、ミユキに《みかわしの服》を買ってプレゼントした。
ミユキが戦いに参加しないことはわかっているが、もしものためだ。それに、《たびびとの服》よりももう少し可愛らしいものを着せてやりたいと、女心に思った。
『転生したらローレシアのメイドさんだった件』