CHAPTER 21
一行は、船のことは一旦諦めて港を徘徊した。
たくさんの出店が並び、にぎわっている。
サ「珍しいもんがいっぱい並んでるな。
女の子だ。ブローチの1つも欲しくなるもんだろう?」サマルはミユキに言った。
ミ「いいえ、いいんです。
オシャレは好きですが、私にはムーン様からいただいた《みかわしの服》がありますわ」
サ「よく出来てるよ、君の従者は」サマルはローレにつぶやいた。物を欲しがってばかりいた妹のことを思い出しながら。
サ「何か買っていってやりたいが、帰る旅ではないしな」
すると、行商の掛け声が聞こえてきた。
商「さぁー寄ってらっしゃい見てらっしゃい!
東の国の至高の美術品、《風の紋章》だよぉ~!」
一行「《風の紋章》!?」
ロ「まさか!」
一行はその男の出店に駆け寄った。
床に布を敷いただけの粗末な出店だ。そこにタペストリーのようなものが多数並んでいた。
ロ「これは?レプリカじゃないのか?」
商「レプリカなんて滅相もない!
これはウチが元祖だからね!
美しい芸術作品だろう?部屋に飾るもよし、ブレザーに縫い付けるもよし!」
ム「絶対偽物だわ」
サ「そうだろうが、1つ買っていっておこう。
おじさん、これ幾ら?」
商「お目が高いね!1つ1000ゴールドだ!」
サ「高いな(汗)」
ロ「サマル?」
サ「いや、いいんだ。騙されるとわかって持っておく」
サマルは行商から1つ、《風の紋章》を買った。
ロ「君はしたたかだな!」
サ「目算がハズれることもあるよ」
ロ「瞬時にいろいろ考えつくのか?」
サ「ハハ。もし無駄な買い物だったら、10日間おやつ抜きでいいよ」
ロ「いや、5日分は僕が持ってやる」
サ「時には駆け引きが必要だ。人生にも、戦にも、冒険にも」
ロ「たぶん、その通りだ」
サマルは一層微笑み、ローレの肩に手を回した。
ム「二人は仲がいいの?」
ミ「そうだと思いますわ」
『転生したらローレシアのメイドさんだった件』