CHAPTER 27
やがて一行は、城壁街に囲まれた窮屈な町を発見する。
城壁の内側は、古びた町であった。
サ「うわぁ、異国に来たってカンジだなぁ…!」
町「冒険者か?ここはエンドールだ。昔は栄えてたらしいが、今はこのザマさ。優雅に観光するようなところじゃねぇよ!けけけ!」
まったく均整のとれていないボロい醜い家々が、迷路のように乱雑に密集している。スラム街とでもいうのだろうか。
ム「臭い…!」
町は妙な臭いがした。
何の臭いだ?と道ゆく人に尋ねてみると、
町「臭い?別に何の臭いもしねぇけどな」と澄ました顔で返ってくるのだった。
生活臭なのである。慣れ過ぎていて、住人たちにはあまりわからないようだった。
ミ「見て!路地を牛が歩いております!」
ローレシア大陸ではまったく見られない光景だった。牛が狭い路地を闊歩している。糞尿を垂れ流しても誰も気にしていない。
それどころか町民すらも方々で立ち小便をしたりしている。
ロ「臭いだけじゃなく汚いぞ。気を付けて歩こう」ローレは皆に注意を促した。
人々の目はうつろだ。生気がない者ばかりでなく、妙に陽気な者も多いが、酒に酔っているように見える。
ミ「ローレ様、わたくし怖いですぅ」
ローレとサマルは女性を隠しながら歩いた。
不意に、豊かなヒゲをたくわえた白装束の老人に呼び止められる。
老「我は聖者だ。
冒険者か?手を合わせて祈りなさい。清めてしんぜよう」
サマルは興味本位で言われたとおりに手を合わせて目を閉じた。
しかし 何も起こらなかった!
老「よしよし。もう済んだ。
10ゴールドでよろしい」
サ「は?」
老「10ゴールドだ。清めてやった」
サ「いや、払いませんよ!」
老「喜捨をなんと心得る!このバチ当たりめ!」
サ「だって、『清め』って言って何にもしてくれてないでしょう?」
老「神を侮辱するのか!この愚か者が!」
ロ「サマル!もう行こう」
ローレは強引にサマルの肩を掴み、彼を老人から引きはがした。
ム「何だったの?今のは…」
おかしな町である。
しばらく歩くと、武器屋の看板が見えた。
ロ「お、こんな町にも武器屋があるぞ!覗いてみよう」
武「おや、冒険者かね?」
サ「何かいい武器あるかな?」
武「御覧の通りさ!」と武器屋は愛想よく笑った。
しかし店内に立てかけられているのは、錆びた剣や錆びたオノ、ほこりをかぶった杖や欠けたブーメランばかりなのであった…
サ「ちょっ!この錆びた剣、幾らなの?」
武「お目が高いな!そいつは800ゴールドだ!」
サ「おい冗談はよしてくれよ!8ゴールドの間違いだろ?」
武「ははは!この町の者にとっては800ゴールドの価値がある」
ロ「何なんだ?この町は」
武「ははは。生気に満ちた冒険者をだまくらかすのは無茶ってもんだよな。
俺も外と貿易しながら武器屋をやってきた男だ。
外の人間から見て、『スラム街』と呼ばれるような町であることはたしかだな」
サ「はぁ。頭痛くなってきたよ僕も…」
『転生したらローレシアのメイドさんだった件』
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