CHAPTER 30
川のそばにいるとそれだけで生気が吸い取られるような気になってくるので、一行は路地に引き返した。…いや、路地とて臭いと汚物によってどんどん元気を失っていくのであるが…。まるで毒の沼地の上に建てられたような町である。
とにかく迷路のような路地を歩いていると、不意に悲鳴が聞こえた!
「待てー!」
一行が声のするほうへ駆けつけると、太った商人が倒れ込んで、はぁはぁと息を切らしていた。
ロ「どうしたのですか!?」
商「盗っ人だ!はぁ、はぁ、ワシの大切な武器を盗んでいきやがった!」
サ「盗賊か!人ですか?魔物ですか?」
商「はぁ、はぁ、人だったと思う!腹の出た太ったやつだ!
向こうに走って消えてった!」
商人は北の方角を指さした。
ロ「あなたは宿屋にでも身を隠していてください!」
一行は商人から武器を盗んだ盗賊を追いかけた!
町のはずれまで走ったが、視界の開けた荒野に目を凝らしても、何の姿も見えない。
サ「素早いやつだな!」
一行は町に戻って聞き込みをすることにした。
ロ「この辺に盗賊の噂などありますか?」
町「いっぱいあるよ、はっはっは!」
サ「頭が痛ぇな(汗)」
人の敵が人となると、益々悲しくなってくる4人であった。
やがて、北のほうの洞窟をねぐらにする盗賊がいる、という情報を聞きつけた。「それだ!」一行は北に洞窟を探して歩きだした。
道のない林を越えた先に、洞窟はあった。
一行は気を引き締めて、洞窟への潜入を試みる。
人が住む洞窟とあって、ところどころにランプが灯され、視界はあった。しかし魔物は巣食う。こんな手強い魔物の住む中をかき分けて暮らすということは、戦闘能力も高い盗賊であることが察せられた。
ロ「きっと戦闘になるぞ!体力を温存しながら進まないと」
幾つかの分かれ道を経て奥へ奥へと進むと、突き当りには木の扉がしつらえられてある。
サ「洞窟の奥に家を構えているのか?」そうであるらしかった。
ガチャガチャ!扉は鍵がかかっている。
ローレとサマルは二人で一斉に突撃し、扉を叩き壊した!
ドシャーン!
盗「どわーーー!!」その物音で驚いた盗賊が、間抜けな叫び声をあげた。
扉の奥は様々なものが置かれたちょっとした寝室だった。被害者の商人によく似た出っ腹の盗賊が叫んでいる。似つかわしくないまともなベッドの上で、ぐーすか眠っていたらしかった!
盗「なんだおめぇらは!!」
サ「商人の武器を盗んだのはおまえだろう!取り返しにきた!!」
盗「俺様が盗んだって証拠があんのか!」
壁にはサマンオサでよく見た幾つものヤリやオノが立てかけられている。
サ「押し問答をしてる暇はない!成敗するぞ!」
盗「ちょっと待てー!!」
ロ「なんだ!」
盗「部屋の外に出たまえ!!」
盗っ人ジャミラスがあらわれた!
サマルの攻撃!ジャミラスに35のダメージ!
ムーンはバギマを唱えた!ジャミラスに40のダメージ!
ローレの攻撃!ジャミラスに53のダメージ!
ジャ「おめぇら強ぇな!
ちょっと待て!」
サ「なんだよ今度は!」
ジャ「朝食だ!」ジャミラスは《ファイトいっぱつ》をゴクゴクと飲んだ!
ジャ「むーん!パワー全開!!」ジャミラスは間抜けなポーズで自分に酔いしれている!
サ「なんだ《ファイトいっぱつ》って??」
ジャ「ふっふっふ!ドーピング剤みたいなもんだ」
ロ「ドーピング…」
ジャミラスの攻撃!サマルに63ポイントのダメージ!
サ「うぐっ!!!」
ム「強いわ!」
ジャ「はっはっは!攻撃力が2倍に上がったからな!」
ロ「サマル!僕に《スカラ》を掛けてくれ!」
サ「わかった!」サマルは《スカラ》を唱えた!ローレの守備力が上がった!
ム「《ベホイミ》!」ムーンはベホイミを唱えた!サマルのHPが回復した!
ジャミラスはムーンに攻撃しようとした!
しかし、ローレはムーンの前に立ちはだかり攻撃をかばった!ローレに28のダメージ!
ジャ「このやろ!邪魔しやがって!」
ム「あ、ありがとうローレ!」
サマルは《砂塵のヤリ》を振りかざした!
《マヌーサ》のごとく砂嵐がジャミラスを襲う!しかしジャミラスには効かなかった!
ジャミラスはサマルに攻撃しようとした!
しかし、ローレはサマルの前に立ちはだかり攻撃をかばった!ローレに25のダメージ!
ジャ「ムキー!またおめぇか!!」ジャミラスは間抜けな顔で悔しがっている!
サ「ローレが攻撃を引き受けてくれているが、向こうにダメージが与えられない…!」
ロ「それで良い!戦闘を続けてくれ!」
ミ「ローレ様!!」ミユキはローレに《ホイミ》を唱えた!
ジャ「よぉしそんならおめぇに攻撃だ!」ジャミラスはローレに襲い掛かってきた!ローレに30のダメージ!
ロ「の、望むところだ!」ローレは歯を食いしばって耐えている!
サマルは《砂塵のヤリ》を振りかざした!
《マヌーサ》のごとく砂嵐がジャミラスを襲う!しかしジャミラスには効かなかった!
サ「効かないのか《マヌーサ》は!」
ジャミラスはムーンに攻撃しようとした!
やはりローレはムーンの前に立ちはだかり攻撃をかばった!ローレに32のダメージ!
すると…
ジャ「ぐはー!!」悲鳴を上げたのはジャミラスのほうだった!ジャミラスは醜い腹を投げ出して倒れ込んでいる!
ジャ「疲れたぁー!
はぁ、はぁ。よぉーし、もう1回ドーピングだ!」
ジャミラスは《ファイトいっぱつ》をゴクゴク飲んだ!
ジャ「げっぷっ!!」
ロ「サマル!もう1回僕に《スカラ》を!」
サマルは《スカラ》を唱えた!ローレの守備力が再び上がった!
ムーンはローレに《ベホイミ》を唱えた!ローレの傷が回復した!
ム「押してるのか押されてるのかわからないわ…!」
ジャミラスはさらに2回、一行に攻撃を仕掛け、2回ともローレがかばった!
ジャ「ムキー!うぜーなおめぇ!!」
ロ「はぁ、はぁ、はぁ…!」
ローレも憔悴しはじめている!
ジャミラスはローレに向かって突進してきた!ローレは素早く身をかわした!
ジャミラスは勢いあまって壁にぶつかってしまう。
ジャ「ぐはー!!」また悲鳴を上げて、ジャミラスは大の字にぶっ倒れた!
ジャ「しんどぉー!
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。
よぉーし、もう1回ドーピングだ!」
ジャミラスは《ファイトいっぱつ》をゴクゴク飲んだ!
サマルはローレに《スカラ》を唱えた!ローレの守備力が上がった!
ロ「さぁ、もう一発かかってこい!」ローレはジャミラスを挑発した!
ジャ「よぉーし、こうなったら必殺技だ!!
喰らえ、《オノ無双》!!!」ジャミラスは体ごと勢いよくオノをぐるぐる回した!!
ローレ、サマル、ムーンはそれぞれ70程度のダメージ!!!
ロ「まずい!全体攻撃を使えるのか!!」
サマルは《ホイミ》を唱えた!ムーンの傷が回復した!
ムーンは《ベホイミ》を唱えた!サマルの傷が回復した!
ミユキは《ホイミ》を唱えた!ローレの傷が回復した!
サ「まずいぞ!あれを何度も撃たれたら回復が追い付かない!!」
ジャ「畳みかけてやる!
喰らえ、《オノ無双》!!!」ジャミラスは勢いよくオ…ノを…ぐ……るぐ……る………バタン!!
ジャミラスは醜い腹を投げ出して、大の字にぶっ倒れた!
ジャミラスをやっつけた!!
サ「勝った…のか?」
ム「どうなってるの?」
ロ「はぁ、はぁ、はぁ…。
ドーピングの副作用で自滅したんだよ」
サ「自滅!?」
ロ「あぁ。こいつの《ファイトいっぱつ》とやらは『ドーピングだ』と言っていた。
ドーピングは興奮によって一時的に力が増すけど、その効果が切れたときに暴れたぶんのダメージや疲労感がまとめて襲ってくる。それで体がオーバーヒートして、自滅してぶっ倒れたんだよ。
普通の『バイキルト』はこういう副作用はないけどね。
ドーピングってのはリスキーなんだ」
一行は、部屋にあった武器を幾つか抱えてエンドールの商人のもとに戻った。
商「おぉ、ワシのヤリを取り返してくれてどうもありがとう!」
サ「残りの武器は違うのか。どうしようかなこれらは」
商「うん?それもワシが貰っておこう!」
サ「え?」
商「違った!それもこれもワシの武器だよ!返してもらおう」
サ「あ、そう…」
商「じゃぁな!君らの幸運を祈っとるよ!」
商人はそそくさと行ってしまった。
なんとも後味の悪いスラム街だった。
『転生したらローレシアのメイドさんだった件』