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CHAPTER 32

CHAPTER 32


ほどなくスウォンは足を止め、一行が追い付いてくるのを待った。

サ「あの、どういうことですか?」

ス「私はバトランドの兵士長、スウォンという者だ。

 魔王討伐における最高責任者である」

サ「はぁ」

ス「そなたら、私の家来にならぬか?」

サ「ホンキで言ってるんですか?他所の民ですよ」

ス「他所も何も関係はない」

サ「でも僕たち、家来にはならないのです。あなたの戦法には加われませんよ」

ス「………。」

スウォンはしばらく考えて、また口を開いた。

ス「すまなかった。言葉を訂正しよう。

 では、私の仲間にならぬか?」

一行「え!!??」

ス「家来ではない。仲間だ。

 家来は並列な関係性ではない。しかし仲間は並列関係だ」

サ「へ…??」偉そうな口調で面白いことを言うなぁ、とサマルは思った。

スウォンはすっと手を出した。握手を求めているのである。

サマルは戸惑いながらもそれに手を差し出し、半分だけ手を触れた。

サ「もう少し詳しく、お話を聞かせてもらえませんか?」

どのような表情をすべき事態かもよくわからない。するとサマルははにかむのだった。


スウォンは一行を、そばのベンチに座らせた。

ス「魔王軍の襲撃が悪化してきている。それは知っておろう?」

サ「はぁ」

ス「この国も襲撃を受けたことがある。何度か戦った。

 それによる私の見解は…

 『戦争は最少人数のほうが良い』ということだ」

ロ・サ「…!!」

ロ「なぜです?」ローレは興味深く口を挟んだ。

ス「大勢の兵を連れ立っても、その大部分は呆気なく壊滅される。

 これは魔王軍との戦いに限ったことではなく…

 この世界には幾重の戦争の歴史があるが、どの将もそんな戦ばかりを繰り返してきた。

 原始の時代ならそれで良かったのかもしれない。

 しかし、魔法や火薬を用いた近代戦争において、無数の歩兵などほとんど役に立ちはしない。ように思える。

 ただ数の虚勢で威嚇になるだけだ。しかし実際は、魔法や火薬の集団攻撃の前に壊滅する。

 つまり、大勢の歩兵はただ捨て駒になるだけだ。

 こんな愚かな戦があるだろうか?

 民を守るための戦なのに、忠誠心あふれる無数の民を将の肉壁にする…。これは馬鹿げている」

ロ「似たようなことを…僕は考えていました。幼い頃から」

ス「まことか!?」

ロ「はい。僕も戦う国の子として生まれました。

 幼いうちから、剣技だけでなく兵法を教わって育ちました。

 巧みな兵法は、それはそれで素晴らしいと思います。

 でも、根本的に間違っているような気がしていました」

ス「そなた、どこの国の者だ?」

ロ「………。」

サマルは、ちらっとローレの目を見た。「身分を言うな」と釘を刺したかった。

ロ「西の大陸の者です」これなら無難な回答だと、彼は思った。

ス「もしや!」しかしスウォンは察しが良かった。

サマルは咄嗟に口を挟んだ。

サ「ごめんなさい!

 あなたの考えはとても素晴らしいものです!心より敬服申し上げます。

 でも…でも、

 僕の仲間たちはメンタルの弱い者ばかりでして、高圧的な人とずっと一緒にはいられないのです」

ス「………………わかった。ふふ。

 しかし、仲間になることは拒否させない。

 そなたらに、ささやかながら武器だけでも贈りたい」


スウォンは、掴みどころのない人物だった。…普通の人からしてみれば。

しかしローレやサマルにとって、彼が何を考えているのか、わかり合えるのだった。ただ口調だけが違った。そしてそれは、旅を共にする仲間としては大きな問題なのだ。



『転生したらローレシアのメイドさんだった件』

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