CHAPTER 36
一行は城下町に戻り、宿屋に向かった。
しばらく休んでいると、兵士から伝令が入るのだった。
兵「格闘大会への参加、まことにありがとうございます。
格闘大会のルールはこのとおりです。
参加は一人だけ
魔法を使ってはいけない
戦績に応じて豪華な報酬が与えられる
以上。さらなる細かいルールにつきましては当日にお伝えいたします」
兵士は伝令を終えると、そそくさと去っていってしまった。
サ「なんだこりゃ!?狂犬に困ってるなら多くの戦士でただ処分すればいいのに、1人しか参加できない格闘大会だって?」
ロ「余興を兼ねている、という意味だな?」
ム「はぁ…」権力者の企みに愛想を尽かす溜息である。
ミ「しかし報酬があるから強者は参加してしまう、と」
サ「まぁいいんじゃないか?狂犬に国が困ってるのは事実だろう。
その処分に協力してやるのは真っ当な話だ。
余興を兼ねるということは、報酬は確かなものがあるだろうし」
ロ「でも一人だけだって言うぞ?誰が出る?」
サ・ム・ミ「ん!」皆一斉に、ローレを指さすのだった。
ロ「えっ!(汗)」
ム「魔法を使ってはいけないとなると…」ムーンは候補から外れる。
サ「で、僕と君だったらまぁタイマン勝負に向くのは君だよね」
ロ「はぁ。しょうがないか」
ローレはもはや、国王のためではなく一行のために参加するのだった。
サ「でも君、優勝しちまうかもしれないぜ!
魔法で回復が出来なくても、《アモールの水》があるじゃないか!」
並の冒険者は回復アイテムなど《やくそう》しか持っていない。《やくそう》は30ポイントほどのHPしか回復することが出来ないが、《アモールの水》は100ポイントも回復できるのだ。
ロ「たしかに、有利ではありそうだな」
ローレは夕食後、窓辺に腰かけてぼーっと町を見下ろしていた。
町「おい!明日も格闘大会が開かれるらしいぜ!
今のうちにチケット買っておかないとな!」
やはり余興としての存在感は大きいと見えた。
こうしたものへの参加には抵抗感が大きいが、「権力者とも上手く付き合え」というサマルの助言を思い出し、わだかまりは心に押しとどめるのだった。
翌日、一行は格闘大会参加のために再び城へ向かった。
名もなき兵士が伝令にやってくる。
兵「ルール説明の追加を行います。
本日の大会ですが、魔法だけでなく武器の使用も禁止です」
一行「なにぃ!?」
ロ「素手で戦えっていうのか!?」
兵「左様でございます。たくましい筋肉をしておられます。問題ないかと存じます。
加えて…
道具、回復アイテムの使用も禁止となっております」
ロ「《やくそう》で回復するのもだめなのか!?」
兵「左様でございます。それに類するアイテムもすべて無効です」
サ「なんだそれは…」
遮るように兵士は続ける。
兵「ただし報酬は豪華です。
狂犬の討伐数が、今月の挑戦者の中で1位ならランクS~Dの商品までどれでも。
2~5位ならランクA~Dの中で選択を。
6~10位ならランクB~Dの中で1つを。
11~20位ならランクCかDの中で1つを。
それ以下の方はランクDのもののみからご選択が可能です。
ランクS
きせきのつるぎ
ランクA
ほのおのつるぎ
ふうじんの盾
やいばのよろい
まほうの法衣
ふしぎな帽子
ランクB
エルフの飲み薬
いのりの指輪
ファイトいっぱつ
アモールの水
ランクC
魔法の聖水
水の紋章
どくがのナイフ
おどりこの服
ランクD
まだらくもいと×10
スライムピアス
銀の髪飾り
うさみみバンド
サ「…!!
おい、みんなこれ!」
報酬ランクCにさらっと書かれたアイテムを、サマルは指さした。
一同に緊張が走る!
サ「ねぇ、これは何ですか?」
兵「あぁ、《水の紋章》ですよ。
タペストリーのようなものです。芸術や骨董品が好きな方はどうぞ」
サ「ローレ、やる気なさそうだが10位以内には入ってくれよ!」
あとは他の誰かが先に持ち帰らないのを祈るばかりである…!!
『転生したらローレシアのメイドさんだった件』