CHAPTER 42
その日の午後、ミユキはどうも元気がなかった。不安そうにしていた、というのが正しいだろうか。
一行はなんとなくそれを感じていたが、少々の体調不良や気分の落ち込みは誰にでもあることゆえ、あまり気にも留めなかった。
男女に分かれて宿屋でくつろぐ夜半、その原因は明るみになった。
ミ「あのぅ、ムーン様?」
ム「どうしたの?」
ミ「昼間のお話、覚えていらっしゃいますか?
快楽的な人は神に滅ぼされるかもしれない、という話です」
ム「えぇ、覚えているわ」
ミ「わたくし、一人だけ滅ぼされてしまうのでしょうか…」
ム「どうして!?」
ミ「愛に生きる女だからです。
愛は…恋愛は…、快楽ではないかと思います」
ム「そうね、恋愛は快楽の一種だと思うわ。
でもミユキは大丈夫じゃないかしら?」
ミ「どうしてですか?」
ム「愛のために、人に迷惑をかけるなら裁かれることかもしれない。
もしミユキが、ローレの戦闘中に『キスしたいからこっちを向いて!』と言うなら、あなたは堕落した人間かもしれないわ。神か誰かはそれを裁くかもしれない。
もしサマルが、言葉巧みに私を密室に連れ込んで無理やりに押し倒すなら…神以前に私が、サマルに100発のバギマを喰らわせるでしょうね。
あなたが『ローレ様を愛しています』と言って、ローレが『ミユキに愛されてそれだけで幸せだ』と言っている。それは二人にとって快楽であっても、罪深いことだとは思えないわ」
ミ「本当ですか!?」
ム「私は恋愛を語れるほどそれを知ってはいないけれど…
人が生きていくうえで、恋愛っていうのは必要なものなのだろうと思う。それをいかに、相手や他人に迷惑をかけないように交わすか、それ次第なのではないかと思う」
ミ「ムーン様…!!」
ミユキは機嫌を取り戻すのだった。
『転生したらローレシアのメイドさんだった件』