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CHAPTER 46

CHAPTER 46


老婆に付き従って里を引き返していく。

ミユキは、機織りの穴に差し掛かると「もう一度見たい!」とねだった。老婆は快く受け入れた。

ミ「わぁーステキ!」ミユキは織物に詳しいわけではないが、色鮮やかな柄の織物や手芸品を眺めて楽しみたいのだった。3人もそれにならった。

機織りの娘たちは、緊張した面持ちで機織りを続けていた。

そのときだ。

ミ「これ、ひょっとして!?」

一同はミユキのそばに駆け寄った。

壁に掲示されていた手芸品の1つを、ミユキは凝視している。

ロ「紋章だ!《風の紋章》だ!」

マ「おやおや、ウチの民芸品を知ってるなんてことはなかろう?」

サ「それが知ってるんです!ほら!」

 サマルは道具入れから、ポートセルミ港で買った《風の紋章》を取り出して見せた。

マ「ほほほ、ちんちくりんじゃな!あなたが刺したんで?」

サ「いいえ、出店で買ったんです。これ、やっぱり偽物?」

マ「刺繍が荒い。柄だけ真似て、誰かが他所で模倣したもんじゃろう」

ム「やっぱりそうなのね」

サ「いいんだ!読めてたことさ!」

ミ「《風の紋章》って、幾つもあるってことでしょうか?」

マ「まぁそうも言えるかしらねぇ。

 ここに貼ってあるやつは、昔私が刺したもんですよぉ。

 若いもんが刺繍の勉強をするために、お手本ね。

 みんな刺繍の練習をするときに、この図柄を刺して学ぶの。だからたくさんあると言えばたくさんあるわね。でも別に練習品だから、それぞれお家に持ち帰って拭き布になったりアップリケになったりするの。そうしてるうちに大抵のは朽ちてなくなってしまうわ。

 中にはひょんなことから里の外に出てしまうものもあるでしょう。それが模倣されたのかしらねぇ」

ロ「これで4つ目だ!」

サ「…じゃないよまだ!

 お婆さん、僕たちこういう紋章を集めて回ってるんです。魔王討伐のために。

 この《風の紋章》、頂いていくことは出来ないでしょうか?」

マ「ほほほ。良いですよぉ。

 こんなボロっちぃので良いんですかい?

 ある意味じゃあなたが持ってたやつのほうが綺麗だわ」

サ「これじゃなきゃダメなハズです!!」

役に立って嬉しいわ、というように老婆はニコニコと微笑んでいる。


サ「あ、お婆さん。世話なりついでにもう1つ尋ねたいんだけど、この紋章と同じようなものがある場所、他に知りませんか?」

マ「ですからそこらの家庭に行けば、ボロっちいのが2つ3つは見つかりますよぉ」

サ「そうじゃなくてですね、他のマークがついた、似たようなタペストリーです」

マ「どうかのぅ…。

 どっかの国が受け継いでいるということかしらの?」

ロ「そうかもしれないです。

 古い伝統のある国など、知りませんか?」

マ「伝統というか…

 『忘れられた国』と呼ばれる国ならある」

サ「それ絶対怪しい!

 どこですか?お婆さん!」

マ「正しくはテロス。しかしこの名を知る者もほとんどおらんじゃろうな。

 そして、この国へは行かんほうがえぇです」

サ「どうしてですか?」

マ「危険ですからねぇ。

 しかし村長さんが言ったのと同じこと。

 止めても留まることはないのでしょうよぉ」

ロ「そういうことです」ローレは強い瞳で言った。

マ「お嬢さんたちもかえ?」

ム「はい」

ミ「もちろんです!」


ふーー、と老婆は大きく息を吐いた。

マ「里の川を渡ってさらに北へ行き、しばらくしたら西に反れなされ。

 岩山にぽっかりと開かれた洞窟を見るじゃろう。

 テロスはその先です。険しい道になる」

サ「洞窟の先か…!」

マ「谷の上まで子供たちに見送らせましょうねぇ」

一行は旅立ちの身支度を整えた。


老婆も集落の入口まで一行を見送った。

マ「村長さんを悪く思わんでくださいねぇ」

 ああ見えて、あなたがたのことを嫌ってはいないんです」

サ「はぁ。わかっているつもりです」

マ「私も彼も、よそから来たんですじゃ。

 まだうんと若い頃のことでした。

 彼に恋した私は、駆け落ちのように町を出て、彼と一緒に旅をしてきました。

 この里での暮らしも長いが、外の人間の気持ちがわかります。

 ですから冒険者を毛嫌いはせんのですじゃ」

ほほほ。と目を細めながら、昔を懐かしんでいるようだった。



『転生したらローレシアのメイドさんだった件』

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