CHAPTER 47
いつの間にかに昨日の子供たちがやってきていた。ププルとバーバラだ。
昨日のよりも小さな翼を持っている。これもまた空を飛ぶための試作品なのだろうか。
サ「お婆さん、ありがとうございます」
一行は深々と礼を言った。
プ「行こう!」ププルは嬉しそうに、サマルの手を引いた。
崖を登る階段を、子供たちは軽やかに駆けていく。猛者のサマルたちが「すごい」と感心するほど軽やかなのだ、しかもここは標高の高い、空気の薄い土地である。苛烈な場所で生まれ育つなら、人は気づかぬうちに超人になったりもする。
プ「お兄ちゃんたち、そのうちお家に帰るの?」
サ「どうだろうねぇ。帰れない覚悟で旅立ってきたけどね」
プ「すごいね!お家はどこなの?」
サ「ずーっと西のほうだよ。海を越えてもっと西の大陸さ」
バ「海ってなぁに?」
サ「知らないのかぁ。川よりずーっと大きな水のことだね」
プ「僕いつか、空を飛んでお兄ちゃんのお家まで行くよ!」
サ「ははは!そりゃ本当に大ごとだぜ!
何日も帰ってこれないけどいいのか?」
ロ「そんなリアルな話は要らんだろう」
ミ「彼女と離れ離れになっちゃってもいいの?」
プ「えーー?
…
…
…
いいよ別に!」
サ「すげー悩んだじゃん!」
バ「彼女じゃないでしょ!もう!」
ム「ウフフ。
性別が違っても、同じ遊びをしたいと思う子は大切にしたほうが良いわ♪」
ミユキが、思いついたようにププルを呼び止めた。
ミ「ねぇ、ちょっと来てみて!」
プ「なぁに?」ププルはミユキのもとへ行く。
ミユキはププルの背中の翼に両手を当てた。
ミ「むむむむむ~~~~、えいっ!!!」
プ「何したの??」
ミ「魔法を込めたわ。うふふぅ♪」
グビアナの神官に自分がされたのと、同じイメージだったのだ。
その時だった!
いつもより強い風が、一行の前を吹き荒れた!
プ「わわっ!」
なんと、ププルの翼は突風にあおられ、ププルは宙に浮いた!
木の葉が舞うがごとく、ププルの体はふわっと浮き、すると今度は谷へ向かって勢いよく滑降してしまった!!
プ「わわーー!!!!」
ロ・サ「大丈夫かーーー!!」一行は焦った!
しかし、幾度となく風に乗る練習をしてきたププルは、その小さな翼で奇跡のように上手く風を掴み、優雅に里へと滑降していくのだった…!
バ「ププルーーーー!!!」バーバラは心配と興奮が入り混じった声で叫ぶ。
ロ「こんなことってあるのか…!?」
サ「ミユキが込めた魔法のせいだったりして!?」
ミ「えぇー!あれはフリですよぉ!」
バ「ププルーーーー!!!」バーバラは興奮に満ちた声で叫ぶ。
ムーンはバーバラの頭に優しく手を置いた。
ム「ウフフ。
しっかり捕まえておきなさい。本当に飛んでっちゃうわよ、あの子♪」
バ「えぇ?」
ム「みんなが怖がることを怖がらない子は、本当にどこまでも飛んでいってしまうのよ。
……。
いいえ、あなたも飛んでいくのでしょうね♪」
『転生したらローレシアのメイドさんだった件』