CHAPTER 49
サ「出たぞ!ついに出たぁー!!」
3人はサマルに代弁を託し、もう何も言葉が出なかった。
魔物が手強い、というだけではない、五感のすべてを追い詰める壮絶な試練だった…!!
洞窟の外は、未だ高地であるようだった。植物がまばらに原生する素っ気ない高原大地のようだった。
たかだか日の光すら、滋養強壮のごちそうに思えた。
日を浴びながらしばらく息を整えていると、どこからか若い男性が現れた。
男「長旅お疲れさまでした!
もう少しだけ歩けますか?私がテロスまでご案内します」
すべてを察している、というような簡潔な挨拶だった。敵意をまるで感じさせない、穏やかな青年である。
サ「僕たちが来ること、わかっていたのですか?」
男「テロスには透視能力を司る霊能者がいます。セレシアというので覚えておいてください。
あ、私はゾラックといいます。
もう少しです。ほら、もう町が見えるでしょう?」
良かった。大した距離ではないようだ。
ゾ「おや?」
ゾラックはなにやら、何もない空間に耳をすましている。
ゾ「ごめんなさい!テレパシーで伝令が入りました。
呼ばれたので先に行きますね!
このまま歩けば町があり、小さな城もありますので」
彼はそう言うと、足早に駆けていってしまった。
一行はぽかんとしながら彼を見送る。
やることは変わらない。最後の力を振り絞って歩くだけだ。
集落の手前に庭園がある。少しの花が咲き、憩いを演出している。
そこに一人の老人が佇んでいるのが見える。
「城がある」とゾラックは言っていたが、どうもそれらしき立派な建物が見えない。道しるべが必要に思え、サマルはその老人に声をかけた。
サ「こんにちはお爺さん。
王様はこの先におられますか?」
老「ワシか?ワシはベッポじいさんじゃ」
サ「いえ、それは聞いてないんですけど(汗)」
べ「ワシか?ワシは掃除夫じゃ」
サ「いや、それも聞いてないんですけど(汗)」
べ「これはボケというものじゃ」
サ「そ、そのようですね(汗)」
仕方なく一行は、そのまままっすぐ歩いてみることにした。
村は素朴だが美しかった。
家々は水色の壁を持つものが多く、歩いているだけで気持ちいいし、癒される。
多くの庭先には花が咲き、色鮮やかに風に揺れている。外の素っ気なさが嘘のようだ。
商売人たちが声を張り上げていたりはしない。日差しのきらめきのようにキラキラと、子供たちがはしゃいでいたりはする。それを温厚な老人たちが目を細めて眺めている。
城はどこだろう?やはりそれらしき建物が見えない。
一行は庭先で水をやる女性に声を掛ける。お城はどこですか?
女「うふふ。こんにちは旅の人。
そりゃ驚くでしょうね。
お城はこの道の先にある、少し色褪せた水色の民家です。端っこの家ですよ」
サ「はじっこの、民家だって?
『お城』ですよ?王様の居城を尋ねているのです」
女「うふふ。そうですよ。私はボケておりませんわ。
肝心なところではちゃんとお話をしなければ。混乱のもとですものね」
サ「王様の居城が端っこの普通の家って…権威もクソもないじゃないですか!」
女「そうですよ。テロスの王様は、権威もクソもないのです。
まったく偉そうにしない、立派な方なのです」
一行「…!!」
ロ「そうか!王だからって立派な建物に住むに決まってるってのがもう歪んだ価値観だ!」
女「うふふ。
あなたがたももし王様になったら、小さな端っこの家に住むのではないですか?」
サ「…!!
そうだ!そうするよ!絶対にそうすることにする!!」
『転生したらローレシアのメイドさんだった件』