CHAPTER 54
ある家の庭は、この集落には珍しく様々なもので散らかっている。武器や防具、そしてそれらを加工するための工具やちょっとした機器が乱雑にとっ散らかっていた。
家の中を覗いてみると、両の二の腕をパンパンに膨らませたワイルドな男性が、今も武器を叩いてるところだった。
サ「ひょっとして、武器屋さんですか?」
男「鍛冶屋、だな。この集落には物を売る店はないから、武器屋という言い方を民はしない。
どうも。ボルカノという者だよ」
ロ「平和な里に見えますが、武器が必要なのですか?」
ボ「魔物の襲来はない。民同士のケンカもないよ。
でも、あの洞窟に腕試しに出ていく奴はいるからね。すると最も平和な村なのに、世界で最強の武器が必要っていう妙なパラドックスが発生する(笑)それに農業用のクワやカマを打ったりもするさ」
ロ「なるほど」
ボ「それに、これは俺が腕力を鍛える筋トレでもあるよ(笑)
世界一強い武器を作るには、世界一強い力が要る。
万が一、何かの手違いであの洞窟から魔物が漏れだしてきたら、先頭に立って戦わなくてはならん。その準備が必要だって緊張感も、常に頭の中にある」
一人で静かに作業しているが、民を守る責任感がとても高いことを伺わせた。
ボ「ところで、君たちも武器を欲しているのではないか?」
ロ「強い武器は、常に求めるところです」
ボ「そうだな。えーっと…
よし、これを持っていけよ!」
ボルカノは、彼の丸太のような二の腕とは対照的なほどに細く美しい剣を、軽やかに放ってよこした。
ロ「頂けるのですか?」
ボ「《はやぶさの剣》だ。非常に軽いが非常に強い。
俊敏に動いて立ち振る舞う剣士に向いてるよ。そっちの細い青年に合うんじゃないか?」
サ「僕?僕が貰っていいのですか?」
ボ「まぁ誰が使うかは君たちで決めてくれたらいいがね。
あぁ、その剣にはもう1つ魅力がある。
素早く大きく振り切ることで、衝撃派のようなものを敵に飛ばすことが出来る。時々それで敵を威圧して、敵の行動を足止めできることがあるよ。攻撃と攪乱を一挙にこなせるスグレモノだ!」
サ「すげぇ!」
ロ「やはり君に合ってるよサマル。
得意の《なぎ払い》をしながら戦うのに合ってる剣だと思う」
サ「君だって剣が欲しいだろうに、良いのかい?」
ロ「はは。物欲でモノを考えてる場合じゃないからな」
ボ「良いパーティだなぁ」ボルカノは両腕を誇らしげに組んで、満足そうに笑った。
サマルは《はやぶさの剣》を手に入れた!
『転生したらローレシアのメイドさんだった件』