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CHAPTER 65

CHAPTER 65


なんとシドーは、不意に突風のように素早く動き、ミユキの体を抱えこんだ!!

シ「はぁ、はぁ、はぁ、みっともない真似はしたくなかったが仕方ない」

シドーはミユキを抱え込み、首元に鋭い爪を突き付けた!ミユキを人質にとったのだ!

シ「戦うことも出来ぬ貧弱な女だ。一撃であの世に送れる。

 はぁ、はぁ、はぁ…

 貴様らはそこから動くな。

 小娘、お前も動くな!動いたらすぐに八つ裂きだ。

 なぁにほんの数十秒だ。

 はぁ、はぁ、はぁ…」

シドーは呼吸を整えた。シドーの傷が徐々に塞がっていく…

サ「なんてこった!回復してしまう!!」

ロ「どうすればいい!」3人は攻撃を仕掛けることが出来ない!


そのときだった!


「ええぇぇぇぇぇい!!!!!!」

なんと、ミユキは世界最凶の怪物の懐の中でも怯むことをせず、渾身の力を込めて隠し持っていた《せいなるナイフ》をシドーのノド元に突き刺した!!!

シドーに1のダメージ!

しかし破壊神シドーは、まったくもって予想外の反撃に精神的に動揺した!ノド元を攻撃されたことに驚き、思わずミユキを突き飛ばした!!10メートルも吹っ飛び倒れ込んだ!ミユキは217のダメージ!!

しかしミユキは死なない!!!


一行は呆気にとられた!

しかし気づいた!!

ロ「今だ!!!」

ローレは再び、すべての力を振り絞ってシドーに斬りかかった!!!

サマルは大切な細身剣が折れんばかりに力任せにシドーに斬りかかった!!!

ムーンは杖をヤリのように構え、なりふり構わず突進して突き刺した!!!

破壊神シドーをやっつけた!!!!!


4人は一同に集まり、そして肩を抱きながら崩れ落ちた。

サ「はぁ~壮絶な戦いだったなぁ!」

ロ「言葉にならんよ」

言葉にならん、と聞いてミユキは重要なことを思い出し、無言でムーンに抱き着いた!

サ「ミユキ、人の痛手を心配してる場合じゃないぜ。

 君だってすさまじい痛みと恐怖を負ったはずだ!」

ミユキは顔だけサマルのほうに向けて、照れくさそうにはにかんだ。

サ「人質が歯向かうなんて初めて聞いたぜ!?」

ロ「攻撃されたら殺されるというのに、君は恐怖ってものがなかったのか?」

ミ「怖かったけれど、怖くありませんでした。

 わたくし、死を恐れてはいないんです。

 死は怖いですけれど、いつでも死ぬ覚悟はあるんです。

 だって、ローレ様やサマル様やムーン様が死を恐れずに戦い続けるのを見てきましたから…!

 お三方が、死を恐れずにわたくしの命を守り続けてくださいましたから…!」

今度はムーンが、無言でミユキをぎゅっと抱きしめた。

サ「ていうか、突き飛ばされても死ななかったぜ!?どうなってんだ?」

ミ「わたくし、自分でも気づいておりませんでしたが…

 この長い旅の中で、体力だけはレベルアップしていたようです(笑)

 攻撃力は0ですけど、HPは結構あったみたいですぅ」

ロ「たしかに、人を強靭にする方法は戦いだけじゃない…」ローレは幼き日々に野良仕事によって体を鍛えたことを思い出しながら、感慨深げに言った。


その時だった!

?「お兄ちゃんよ、お兄ちゃんよ、私の声が聞こえますか?」

一行「!?」

どこからともなく奇妙な声が聞こえる。

?「名家サマルトリアの王女にして世界一かわいい姫、シャロンです。

 今、テレパシーを用いてお兄ちゃんとその子分たちに話しかけ…られるかどうか、チャレンジ中です!

 …聞こえてるのかなぁ?あー、あー」

サ「なんてこった!本当にシャロンなのか!?」

シャ「シャロンは今朝、お兄ちゃんの夢を見ました。

 お兄ちゃんは夢の中で、シャロンに助けを求めていました。体がボロボロです。

 きっと戦いに負けて今にも死にそうなのでしょう!

 そんなお兄ちゃんたちに、シャロンの隣で見たこともないお姫様が話しかけているのです。

 なんだかとっても凄そうな、シャロンの次にかわいい女神様でした。

 その声はお兄ちゃんたちに届いているようでした。

 だからシャロンもマネっこをしてみた次第です。


 お兄ちゃんが旅立っている間、暇なので修行もしました。

 シャロン、世界をひっくり返してしまいそうな、とてもつもない回復魔法まで使えるようになりましたのよ?


 お兄ちゃん、シャロンと会えなくて寂しいかもしれませんが、どうかサマルトリアのお城には会いに戻らないでください。

 なぜなら、そうするとシャロンとお兄ちゃんが行き違いになってしまうからです!


 あー、あー、聞こえますか?どうぞ。


 ロトの子孫たちに、光あれ!」


一行のHPとMPが30だけ回復した!


サ「足りねぇよぉ30じゃぁ~!!」

ローレ、ムーン、ミユキ「わっはっはっはっはっは!!」

一行の幸せな笑い声は、《やまびこの帽子》をかぶったときの《イオナズン》よりも精気に満ちて世界中に響き渡った。



そのとき、何かに気づかせるように小さな突風が吹いた。

一行は思わず空を見上げた。

なんと、妙な鳥が上空を飛んでいる!

何か小包を提げているようだ。

…鳥?

鳥ではない!

鳥のような翼を持った、小さな天使のぬいぐるみだ。

あの翼はどこかで見覚えがある。


妙な天使は優雅に辺りを旋回し、ゆっくりと一行の前に着地した。

小包の中には《せかいじゅのしずく》と《エルフの飲み薬》が入っていた。

子供の汚い文字の、一筆箋が添えられている。

「げんきになる おくすりです」


-The End-



『転生したらローレシアのメイドさんだった件』

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