えぴそーど27 『魔王が女の子ってマジなの!?(仮) -もの言わぬ革命者-』
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- 2024年12月23日
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えぴそーど27
結局一行は、この集落に3日間も滞在した。
セナの真似をして海に飛び込んでいったヒナタは、風邪をひいてしまったのだ。
ダイブすることはヒナタにとっても刺激的で、楽しかった。しかし体は少々ヤワであったようだ。
ヒナタだけでなくカンナも、ミサトも海に飛び込んだ。それが楽しかった。だから3日も居たのだ。
キョウと名乗る例の母親は、「こんな家で良ければ泊まっていけばいい」と言った。
こんな原始的な家で過ごせるのか、ヒナタは不安だったが、「泊まりたい!」とセナが大声で言うので、挑戦してみようと思った。
しかしもう1つ問題がある。「旦那さんもいるのでしょう?その中で雑魚寝で過ごすのは抵抗がある・・・」とカンナが言うと、なんと旦那さんは優しく気を利かせてくれるのだった。
「俺は釣りの小舟で寝るからいいよ♪」と。
彼は夜になると本当に、小舟に降りていって縁(へり)を枕にして寝てしまった。
その様子は、ミジメというよりも、「楽しそう!」に見えた一行だった。
そして2日目の夜、セナはなんとその小舟に、旦那さんの横で眠るのだった!
満天の夜空を見上げ、満点の夜空に包まれ、波音の子守歌を聞きながら、雨期の奇妙な海の臭いに包まれながら、セナは微笑みながら眠った。そして、大きな吊り橋を渡る大冒険の夢を見たのだそうだ。
ミサトはヒナタたちに、神妙な面持ちで言った。
ミ「私とセナは、ひょっとしたら最後までは冒険に付き合えないかもしれない。
もし・・・もし、セナがどこかの村や町で『ここで生きたい』と言ったなら、私は彼女に寄り添ってそこに骨をうずめる覚悟なの」
ヒ「そ、そうだね」
ミサト親子の人生をこれ以上振り回すわけにはいかないと、ヒナタは承知していた。
二人が居てくれたおかげでヒナタは国を脱出することが出来た。それだけで感謝でいっぱいだ。
カ「そして・・・セナの様子を見るかぎり、この村で冒険が終わる可能性が、あるわね」
そう思ったから、ミサトは早々に話したのだった。
朝起きてデッキに出てみると、海に濡れたヒナタたちの服はもう、潮風に吹かれて乾いている。
洗濯も、洗濯機も、洗剤も、乾燥機も電気も要らない、極めてシンプルな洗濯だ。
ヒナタはこの集落の暮らしに興味を持った。滞在した理由の2つ目だ。
風邪をひいてはいたが、キョウに着いていって集落を歩いた。
男たちはのんびりと小舟で釣りに励み、女たちはカゴを持ってフルーツを採りに行く。村の途中で知り合いに合うと、井戸端会議に花が咲く。
ヤシの木が生い茂る辺りまで行くと、着いてきた息子はヤシの木に登りはじめる。そして器用に木の実を落とす。こうやって収穫だ。子供は5歳にしてもう働いているのだが、当人に「労働している」という意識はない。
野菜を育てる者たちもいる。しかし大変そうにはしていない。
魚を干物にしている者たちもいる。塩を作っている者たちもいる。しかし大変そうにはしていない。
キョウは彼らに話しかけると、タダで干物や塩を貰ってくる。その代わり、今採ってきたフルーツを分けてやる。フルーツを分けなくても鶏卵をくれる者もいる。
そうだ。
一行が、「泊めてもらったお礼に宿泊代を」と言うと、「そんなものは要らないよ!」とキョウはあっけらかんと笑うのだった。「この村はカネなんて要らないんだよ!」と。
お金を使わないわけではない。お金でラジカセなど買って家に置く者もいるし、毎月通信料を払ってアイポーンを持つ者も、いるにはいる。
月収は0円だ。しかし誰も寝食に困っていないし、仕事の大変さにノイローゼになる者もいない。悲しい顔をする者もいない。
この村の平均GDPは、いったい世界で何番目に低いのだろうか?きっと最下位だろう。
GDPが低い彼らは、不幸なのだろうか?
この村に学校はないのだろうか?いや、ある。
キョウの息子は学校にも行っている。早朝、ヤシの木登りをした後に学校に登校する。
ヒナタたちも学校の様子を眺めに行った。
算数を教えていて、壁の掲示物を見るかぎり掛け算割り算程度は教えられている。分数も見える。
文章を読んで国語を教え、絵を描いたり、グループで劇をしたりもする。
ミサトはキョウに、質問を投げかけた。
「この村は過去に、魔王に襲われたことはあるの?」と。
「少女の魔王に襲われたの?」とは尋ねなかった。もしキョウやこの村の者たちが最近世界をにぎわせている少女の魔王のことを知らないなら、知らないままのほうが良いだろうと考えたのだ。
キ「魔王?このあたりが魔王に襲われたなんて歴史は、聞かないねぇ。
何百年か前には部族間のいざこざとか、宗教戦争とか、そういうのもあったって聞くけどね。魔王はこんな魚とランブータンしかない村にゃ興味ないさ!はっはっは」
カ「やっぱり、経済発展してない場所は襲われないのかしらね」