エピソード106
王の間。
ユ「女王。冒険者のお客様をお連れしました」
れ「初めまして。れいといいます。
サントハイムという国の、サランという田舎の村から出てきました。何もわからないんです。美しいお城があると聞きまして、観光に来てしまいました」
女「ガーデンブルグへようこそ。ここに来るまで大変だったことでしょう。
・・・サラン?
今あなた、サランとおっしゃいました?」
れ「え、えぇ」
女「昔ここに、サランの村の冒険者が訪れたことがありましたよ。
そのときね、関所のあたりの山が崩れて通行止めになってしまったんですが、なんとその魔法使いの女性が、《マグマの杖》で大きな爆発を起こし、落石を取り払ってくださったんです。たしか、ローズといったかしら・・・」
れ「ま、まさか・・・!
それは私の祖母です!サランのローズと言えば、私の祖母しかいないはずです!」
女「まぁ、なんという巡り合わせ!
あのとき私たちを助けてくれた方のお孫さんだなんて!
そうなの!お祖母さんの背中を見て、あなたも立派な魔法使いになったのね」
ユ「あぁ女王。どうも彼女、回復魔法も操れるとのことなのですが」
女「なんとまぁ!
回復魔法まで使えるとおっしゃるの?
でもね、戦士のようなオーラが見えますよ。どうなっているんでしょう?
ははぁ・・・
先日あの人が、『もうすぐ面白い客人が来るかも』とおっしゃってたけど、あなたのことなのかしらね」
れ「あの人?」
女「ねぇ大臣?
私れいさんに、この国の悩み事を打ち明けてしまおうかと思うんですが、どうでしょう?」
大「えぇ!一人では抱えきれぬ問題かと!3人4人の女性冒険者ならまだしも」
女「だって、一人で3役をこなせてしまうような猛者であるようですよ」
大「はぁ。お話してみれば、宜しいのではないでしょうか」
れ「お困りごと、ですか?
私に出来ることであれば」
女「まぁ本当?どうもありがとうございます。
まず・・・ご存じのことかと思いますが、この国は人を拒んで生きながらえています。
外界に通じる道があの関所の山道しかないのですが、もう1つ何か手段を作るべきと、考えるようになりました。
そして私たちは、気球を発明したのです」
れ「ききゅう?」
女「はい。熱のチカラを使って、悠々と空を飛ぶ乗り物です。
あとで学者に設計図を見せてもらってくださいな。絵のほうが理解が早いでしょう。
それでね、気球は動力源にガスを要するのです。
私たちは家を建てるために、南方に鉱山を掘っていますが、その奥でガスを掘り当てました。
しかし、ガスは毒があるらしく、作業を担った者たちがばたばたと倒れてしまいました。いえ命に別状はないのですがね、ガスの壺が幾つも、鉱山の奥に置きっぱなしなのです」
れ「それを取ってきてほしい、と?」
女「そうなのです。
鉱山のガスは、《キアリー》によって解毒できることがわかっています。
回復魔法が操れるなら、少々危険ではあっても鉱山に潜れるのではないかと考えるのですが・・・」
れ「わかりました。出来るかもしれないです」
女「まぁ、どうもありがとうございます!」
どうもありがとうございます!女王の取り巻きの一同が皆、れいに向かって深々と頭を下げた。