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エピソード12 『首長の村の掟 -真実の物語-』

昼近くまで、

クサカベさん家の庭で、のんびり涼んでいた。

お喋りをしながら。



クサカベさんは、

「ツアーの内容」にはこだわりを見せたが、

「金儲け」には、こだわっていなかった。

商売っ気が無いのだ。


自分でホームページを作り、

ツアーの内容を丁寧に紹介するだけで、

他にはこれと言って、戦略めいたことをしていなかった。

「価格競争なんぞやって、無理やり客を呼んでも、

 意地汚い客が増えて、ストレスになるだけだよ」

と、涼しい顔で笑っていた。



…そう。

彼が、ツアーの集客にこだわらない理由は、

その、ホームページ作成のスキルにも、あった。

彼は、プロのウェブ・デザイナーとして、

現地の中小企業を対象に、

ホームページの作成を、請け負っているのだ。

それも、すこぶるマイペースなものらしい。

何しろ、作成スタッフは彼しか居ないのだから、

無闇に仕事を受注しても、追い付かなくなってしまう(笑)


また、現地の中小企業が対象だから、

大した報酬も、求めていないのだ。

彼は、夫婦2人が暮らせていければ、それで満足なのだ。

あとはもう、

自分の持っているスキルや環境を、奉仕同然で、差し出すのだ!



たとえば、

仕事用のパソコンを使って、CD-Rのデータ焼き業務なんかも、行っていた。

04年当時、デジカメの爆発的な普及とは対照的に、

タイでCD-Rを焼ける環境は、かなり少なかった。あっても、高い。

クサカベさんは、必要としている人たちに対して、

僅かな料金だけを請求して、データ焼きの作業を、請け負っていた。


また、

広い庭は、美しく手入れされており、

陽射しを防げる東屋とあいまって、憩いの場となっていた。

客であろうと無かろうと、日本人であろうと無かろうと、

誰にでも憩いを開放し、好きにくつろがせていた。



彼が旅人たちに優しいのは(旅人以外にも優しいが)、

彼自身もまた、旅人だったからだ。

若い頃に、世界のあちこちを放浪してきたらしい。

「オススメの場所はどこですか?」と尋ねたら、

「中国の奥地の、名前も無いような村が面白かった」

と言っていたから、相当ディープな旅人だ(笑)


スピリチュアルな用語を使うなら、

彼は、「オールドソウル」である。

「オールドソウル」たちは、

世界の各地で、似たような奉仕的な生活を、ひっそりと送っている。

そして、自分らしい生き方をしようとする冒険者たちを、支援し続けている。


『首長の村の掟 -真実の物語-』

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