エピソード124
城門の前には兵士がいるが、来訪者に怪訝な顔をする様子もない。
兵「冒険者の方ですね!さぁさ王様がお待ちかねです!」むしろ歓迎されている気配だ。
なるほど、城の中にもやはり、れいのように遠くの街から来たであろう戦士や魔法使いなどの姿がある。王への謁見が終わったところなのだろうか。
2階の王の間に、威厳に満ちた王が鎮座していた。
れ「サントハイムから来たれいという者です。
魔物が凶悪になって困っていると伺いました。少しは戦えると自負していますが、何かお役に立てることがありますか?」
王「おぉ、よくぞまいられた!
他国の民ながらラダトームを守ってくれるというのはとても感心じゃ。
いいや、ラダトームを救うことはすなわち世界を救うこと。皆が立ち上がるのも当然の理(ことわり)じゃな。
れ「はぁ。この城が救われれば、世界が救われる・・・?」
王「魔物が凶悪化しておる。ラダトームのみならず世界中でじゃ。
それは新たな魔王が動き出した証。
我々は、ラダトームだけでなく世界の民も守らなければならん。そうして遠征隊を派遣している中で、魔界からの悪の侵入を防いでいる陰の賢者の存在を知った。竜王様じゃ」
れ「りゅうおう!それはマスタードラゴンのことですか?」
王「いいや違う。マスタードラゴンという名の神のことも聞き及んでいるが・・・そやつは何もしない。
竜王様は魔界からこの世を守るために、懸命に結界を張ってくださっている」
れ「竜王様はどちらにおられるのですか?」
王「ラダトームからそう遠くない。南東のリムルダール半島に、竜王の城はある」
すると大臣が口を挟んできた。
大「そうでした王様。実はリムルダールのあの城ですが、昔はゾーマという魔の者が占拠していたという情報があります。占拠というか、その魔の者が造った城だという噂が・・・」
王「ええい大事な話の最中に口を挟むでない!
れ「魔の城・・・」
王「竜王様はこの世界を守るために、懸命に結界を張ってくださっておる。
しかしその強大な魔力にも限界があり、結界で守れるのは世界の半分程度で限界だ、とおっしゃっておる。
その綻びは実際に見え始めておる。
ラダトーム周辺の魔物が凶悪化してしまったのもそのせい。勇者の洞窟の奥から、魔界の魔物が這い出てくるようになってしまったからじゃ!
我々は世界の平和のために、指をくわえて震えているほど軟弱ではない!
ラダトームの民は強い!ラダトームは世界を守る!」
れ「あ、はぁ」
なんだか話がややこしい。
れ「それで、冒険者に求めていることは何なのですか?」
王「あぁ。とりあえずは、勇者の洞窟から湧いてくる手強い魔物の討伐じゃ。
洞窟の中だけでなくこの周辺にも徘徊しており、町人にも危機が及んでおるからな!」
それは大変だ。退治が必要に思える。
王「魔物100匹につき金1万ゴールドの報奨金を出す。やってくれるな?」
れ「1万ゴールド!すごい報酬ですね。
何匹倒したかはどうやって証明するのですか?」
王「魔物を倒すと宝石に変わるであろう。その宝石の数で討伐数も読める」
れ「なるほど。街で換金する前に持ってくる必要があるのですね。
ところで、冒険者にそんなに報奨金を出すほど、国にお金はあるのですか?」
王「心配は無用。軍事国家として名高いラダトームは、武器や兵器を世界中に輸出しておる。それで国庫は潤っておる。
魔物が手強ければ武器屋防具屋を覗いてみよ。強力なものが見つかるだろう」
大「王様、竜王様への上納金についても、やはり再考したほうが・・・」
れ「上納金・・・?」
王「おぬしはいちいちうるさいな!客人の前だというのに、礼節というものを持っておらんのか!
竜王様の結界は世界の半分にしか届かん。その傘下に入れてもらう必要がないと申すか!」
大「いえ、そうではないのですが」
王「では上納金を払うのは筋というものだろう!」
大「しかしそのために税金が上がりすぎており・・・」
れいはもう一度、ささやかに口を挟む。
れ「兵器を輸出するお金で国は潤っておられるのですよね?」
王「そうじゃ。しかし国民とて痛み分けが必要である。
もうよいであろう。わしは忙しいのじゃ。
魔物の討伐を手伝ってくれるのなら報奨金も、謁見の機会も存分に与えてやる。何なら国軍の要人にすら抜擢してやる」
れいは王の間から下がった。
もう一人竜の神様が出てきたぞ。
神様は何人もいるものだ、とガーデンブルグの女王も神父なども言ってはいたが・・・
竜王とやらは、ラダトームやこの世界を守ってくれているのだろうか?それとも、その竜王が人々に災厄をもたらしているような気がしなくもない。
竜王の結界の傘下に入れてもらうためには、大金を払わなければならない。神がそんなことを言うだろうか?
なぜ神が、昔の魔王の城に暮らしているのだろうか?
不可解な点が多い・・・。