…まったく眠れないまま、
朝の5時ごろになり、寒さはピークに達した。
疲労も眠気も、ピークだった…。
肌のキレイな日本人が薄汚れた連結車両で震えている様は、
圧倒的にミジメでブザマで、場違いだった。
そんな折、 キセキが起きた…!!!
乗客の一人が、
「中に入りなよ」と、 僕に優しく声を掛けてくれたんだ♪
僕は、「自分の席が無いのさ」と、
ミジメに苦笑しながら、彼に説明した。
彼は、それでも尚、
中に入れと促してくるんだ。
僕は、彼の言う通りに、中に入ることにした。
彼は、車両の一番後ろの座席の乗客だった。
一番後ろの座席は、背面の壁との間に、
わずかなスペースを持っていたんだけど、
彼は、薄汚れた僕を、
その僅かなスペースに、招待してくれたのだ!!!
…座れるほどのスペースは無かった。
けれど、
立っているだけでも、
連結車両にいるよりは、ずーーーっと快適だった!!!
ずーーーっと暖かくて、
ずーーーっと清潔だった!!!
ずーーーっと、シアワセだった!!!
彼は、更に、
3人の友人たちと一緒に、
「暖かい笑顔」で、満身創痍の僕を癒してくれたんだ♪
…しまいには、
「席を替わってあげる♪」 とまで、言い出してくれた!!!
3人の友人たちも、それに続いて、
変わりばんこに席を譲ってくれた!!!
誰一人、
メンドクサそうな表情を漏らす人は、いなかった…!!
お陰で、僕は、
最後の2時間ほどは、
ずーーーっと座席に座り続けることが出来た♪
彼らは、
何の対価も、求めてこなかった。
ただ、ただ、
異国の旅人と会話出来ることを、喜んでくれていた♪
みんな、大して英語は上手くなかった。
それぞれに協力し合って、会話を補完させていった。
…何を話したか、
今となってはさっぱり覚えてナイけれど、
彼らが終始、笑顔だったコトだけは、
今でも、忘れない。
「表情が脳裏に焼き付く」
とは、こういうコトを言うんだろう。
一つ、訂正をしておきたい。
僕はこれまで、
「アラブ人はウソ付きが多い!」ってなコトを、繰り返し書いてきたと思う。
けれども、それはあくまで、
「観光客相手の商売をしている人たち」
のことだと、思ってほしい。
一般人や、一般人相手の小売店など営んでる人たちは、
おおむね、優しくて温厚だよ♪
英語を操れる人は少ない傾向にあるけれど、
手を差し伸べる人情は、
むしろ、日本人の平均よりも優秀だろうと思う!!
『導かれし者たち』