第2章 神秘的なこの世界
エピソード26
攻撃魔法を覚えたれいは、意気揚々と街の外へ繰り出した。
さぁ魔物よ。どこからでもいらっしゃい!とどこかのファンタジー小説の魔法使いになった気分で、腰に手を当て胸を張る。
まずはいっかくうさぎを相手に《メラ》を試し打ちしてみると、一撃で葬り去る威力があった。
《ヒャド》でバブルスライムを攻撃すると、やはり一撃でやっつけることが出来る。
すると宿敵マンドリルが現れた!
え「えぃ!」れいは今までのうっぷんを晴らすかのように気合いを入れて《メラ》を放つ!
ボボン!
見事マンドリルに命中するが、一撃ではマンドリルは倒せない!怒り狂って、ものすごい形相で飛び掛かってきた!
れいは必死に逃げて再び距離をとる。
魔法の利点は、相手の至近距離まで入らなくても攻撃出来ることにもある。立ち回りにバリエーションが増えるし、敵の攻撃を喰らいにくくなる。
狙いを定めてもう一度《メラ》を放つが、まだ倒しきれない。3発目でようやくマンドリルは宝石に姿を変えた。
れ「そうか。マンドリルの体力は《メラ》3発分なのね。そしていっかくうさぎの3倍くらいの体力があるってことだわ」
頭の良いれいは、このように、戦いながらも頭を働かせ、魔物ごとの体力の高さや特徴を分析していった。
マンドリルの懐まで入らずとも、マンドリルと殴り合いをせずとも倒せるようになったのは、大きな戦力アップだ。まだ「手強い」という感覚は拭えないが、随分ましになり、不安が減った。
少し自信を得て少し調子に乗ると、また出鼻をくじかれる。
次に現れたのは、バブルスライムの3匹の群れだ!
こいつは毒の攻撃を仕掛けてくるから厄介だ!1匹なら早々に倒すことで難を逃れられるが・・・
先手を取り、《メラ》で確実に1匹を仕留めたが、やはり残りの2匹がへらへらと反撃してきた!《毒消し草》を買いはしたが出来れば毒のダメージを喰らいたくない!れいは必死に逃げる。
2匹目!れいは思いきり《銅の剣》を振り切った。それで2匹目のバブルスライムをやっつけたが、なんと剣がすべって転がり落ちてしまった!
すると残ったバブルスライムは、れいの《銅の剣》の上に乗っかり邪魔をするのだった。
れ「ま、まさか奴の毒で《銅の剣》が溶けたりしないわよね!?」れいは焦った。
急いで片を付けるぞ!と思って格好よく《ヒャド》を放つ!
しかし、何も起こらなかった!
れ「えぇ!?」
ガス欠だった。れいの魔力がもう切れてしまったのだった。そうか、魔法を永遠に撃てるはずがない。
剣を失い、魔法を失い、れいは焦った!どうする!?奴のプニョプニョの体では殴ったところでダメージが通るとも思えない。
一か八か!れいは奇策に出た!
なんと、さっき購入した《聖水》と《毒消し草》をまとめて、バブルスライムに投げつけた!
《毒消し草》でバブルスライムの体内の毒を消せないものか?
《聖水》は振りかければ魔物に少しのダメージが与えられると聞いたぞ!
瞬時に思いついたアイデアは、どちらが優先順位が高いのかわからないので、一挙に試してみたのだった。
少しでも、何かが起こってくれればいい!!
すると!
じゅわぁぁぁぁ・・・!
バブルスライムの体は奇妙にも溶けていった。バブルスライムをやっつけた!
れ「やったぁ!」
厄介なバブルスライムの群れを見事やっつけた!
そして・・・!?
ヒィィィィン・・・!
なんと、れいの体が、手が、青白く光っている。
なんだこれは!?
魔法を伝授してもらったときの反応によく似ている・・・?
するとれいの頭の中で、「解毒の魔法を会得した」という感覚がした。
たしか、戦闘や経験を重ねることで魔法を会得することがある、と誰かが言っていた。
れいは《銅の剣》を取り戻すと、試しにもう一度、バブルスライムを探して戦ってみた。
そして敢えて毒の攻撃を受ける。
バブルスライムをやっつけて身の安全を確保すると、左腕に手をかざし、「解毒の魔法!」と心で念じてみた。
ヒィィィン・・・!
れいの体が光り輝き、そして毒を受けた左腕も黄色く光り輝いた!そして毒の反応が消えている。
れ「やっぱりそうだわ!」
れいは《キアリー》の魔法を覚えた!
色々なことが起こる。日常生活では考えられないようなことが。
様々な人に出会い、様々な修羅場に遭遇し、様々に不思議なことが起こる。
これが冒険というものか!!
お婆ちゃんは若き日々、こんな刺激的な毎日を繰り返していたのか!!
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