エピソード32
大通りからはずれた場所に、本のたくさん並ぶ店を見つけた。
図書館だろうか?入って尋ねてみる。
男「いいや、古本屋じゃよ。貸すのではなく売っている」
れ「そうですか。魔法の勉強に興味があるのですが、魔法学校の教科書みたいな本はありませんか?」
男「あるにはあるぞ」男は本棚から幾つかの本を見定める。
男「しかし本っていうのは結構高いぞ。こっちは1,000ゴールド。そっちは1,200ゴールドじゃ」
れ「た、高い!」命に関わる武器や防具を300ゴールド払って買うのが精いっぱいな今のれいだ。読書のために1,000ゴールドというのはちょっと釣り合わない・・・。
れ「でもこの町では結構な需要があるのですか?」
ヨ「いやワシは、古本を売りながら、学者をしておる。魔法学者をな。ヨーダと言う。
魔法学者というのは魔法以外にも色々調べものが必要じゃから、本に囲まれていて丁度いい」
れ「なるほど。そうですね。
お爺さんはどんな魔法の研究をしているんですか?」
ヨ「瞬間移動の魔法を研究しているんじゃがね。なかなか手こずっておる」
れ「瞬間移動!そんなことが可能なのですか!?」
ヨ「可能である。古代にそういう魔法が存在し、名を《ルーラ》と言った。
どうにか現代に復活させてみたいもんじゃが・・・難しいのう。
いずれは弟子をとって、そのまた弟子あたりがようやく、じゃろうかな」
れ「この町には魔法学校がありますから、町の誰かはすぐに達成するんではないですか?」
ヨ「いやぁ、どうかのう。
学校があるゆえ多くの魔法使いを生むが、一流は何人育つか・・・」
れ「えぇ!?」
ヨ「集団教育は、良いとも言えない。学校なんていう場じゃと、心の教育が追い付かないのじゃよ。
子供一人ひとりのメンタルまで見てやることは難しい。
そのうえ他の生徒と競わされたり、期日までに課題をこなさなければならんかったり・・・。そういうことをやっていたんでは、大抵の子は心根が曲がる。
『友達より先にメラミが使えるようになりたい!』なんて野心で学んでいると、心根は曲がる。
そうならないように日記や読書感想文など書かせたって、タテマエしか書かんよ。情操教育にはならん」
れ「そうなのですか・・・!」
ヨ「お嬢さん。魔法への関心が強いなら覚えておきなさい。
凄い魔法を使える者が、素晴らしい精神を持っているわけでもない」
お婆ちゃんはどうだったのだろうか。偉大な魔法使いと言われていたが。偉大な政治家と言われている人が本当に偉大とは限らない。ヨーダが言ったのはそういうことだろう。メラゾーマが使えるうえに名声があるとしても、精神性が高いとはかぎらないのだ。
れ「ヨーダさん。私やっぱり、本を買いたいです。旅の暇な時間に本を読みたい。
魔法以外の本なら手頃な値段ですか?
ヨ「ものによっては安いが、それでも半値はするよ。その《青銅の剣》よりも高い。
本が欲しいのか。そうじゃなぁ。
この町の西に、魔法っ子の力試しのための塔がある。ダンジョンというやつじゃな。
昔この町の魔法教師が、魔法のチカラで塔を改築したらしい。
そこには宝箱も幾つか潜んでおるよ。幾つも開ければアイテムやゴールドが手に入る。要らんアイテムなら売ればカネになる。ちっとは金策になるじゃろ。戦闘や冒険の訓練にもなる」
れ「それは面白そうですね!」