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エピソード39『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』

エピソード39


トルッカの町に寄り、そしてついに崑崙(こんろん)の森へと戻ってきた。

森は相変わらず巨大な真っ黒な怪我を負い続けており、今でもところどころで煙がくすぶってもいた。

一行は、特にゆなは、改めて胸を痛める。

キ「さぁさ、悲しんでたって時間がもったいないわ。

 急いで森の治療をいたしましょ♪」

キキは《春風のフルート》を取りだし、ゆなにもそれを促す。

《春風のフルート》は今日も、朝露を浴びたすずらんのようにキラキラと輝いていた。

キ「いい?私が上でハモるから、あなたは主旋律を吹いてね♪」

ゆ「う、うん!」ドキドキ・・・

キ「ワン、ツー、せーの・・・」

ゆ・キ「トゥルル、トゥルル、トゥルルットゥットゥットゥットゥッ、ルールールー♪」

《春風のフルート》は、世にも爽やかで軽やかなハーモニーを大地に響かせた!


メキメキメキメキ!!

なんと、森の木々が瞬く間に再生していく!


な「すごぉぉーい!!トトロの映画みたぁい!!」

キキ「もう1回♪」

ゆ・キ「トゥルル、トゥルル、トゥルルットゥットゥットゥットゥッ、ルールールー♪」

メキメキメキメキ!!

なんと、森の木々が更に再生していく!


ゆ「で、できたわ、私にも!」

キ「うーん。でも思うように木が生い茂らないわ・・・

 山火事の浸食が、思った以上に大きすぎる。

 もう1人、3度下でハーモニーを奏でてくれれば威力も強くなるんだけどねぇ。

 どうしよう。私の命を削って、フルパワーで演奏するしかないか・・・」

キキは人差し指を口元に当て、ためらうようにつぶやいた。

な「え、そんなのはダメ!」

キ「でも、山を元通りの姿に治癒してあげなくちゃ。

 《ベホマズン》級の魔法は使えなくなっちゃったから、生命力を削って何とかしないと・・・」

な「あ、あ・・・」

キ「よしゆな、もう1回吹きましょう!」

ゆ「はい!」

ゆ・キ「トゥルル、トゥルル、トゥルルットゥットゥットゥットゥッ、ルールー・・・」

なんと、吹ききる前にキキはめまいでよろめいてしまった!

キ「ダメねぇ、運動不足だわ私も」

ななは居ても立っても居られなくなって、声を上げた。

な「キキちゃん、わたしも吹きたい!吹かせて!!

 でも・・・」

キ「えっ!ななも吹いてくれるの?」

な「でも・・・わたし小指が小さいから・・・上手くできないんです」ななは泣きそうな顔だ。

キ「そんなことで萎縮してたの?

 大丈夫よ♪音楽なんて色んな譜面があるものよ。

 この曲だって、3度下のパートはホラ!

 ドレミッドレミッドレミッミッミッミッミ、ミーレーードーってほら、3つの音しかないの♪」

な「えっ!それならわたしにも吹けそう!」

ゆ「そうよ!一緒にやりましょう♪」

今度は3人で、《春風のフルート》を奏でた!

3人「トゥルル、トゥルル、トゥルルットゥットゥットゥットゥッ、ルールールー♪」

メキメキメキっ!!バリバリバリバリっ!!

なんと森の木々たちは、春のような幸せな空気を吸い込み、喜び勇んで芽吹きはじめた!!

キ「アンコール♪」

な・ゆ「はい!」

3人「トゥルル、トゥルル、トゥルルットゥットゥットゥットゥッ、ルールールー♪」


メキメキメキメキっ!!バリバリバリバリっ!!!


なんと、火事によって重症を負った崑崙(こんろん)の森は、火事の前にも増して青々と生い茂ってしまった!!

3人「すごぉぉぉー!!!!」

キ「ぱちぱちぱちぱち!

 ブラボー!名演奏だったわ♡」

ゆ「良かった。

 とにかく、森を元に戻せて良かった・・・!」

ゆなは瞳を潤ませ、ホッと胸をなでおろした。

ななはななで、幸せに満ちた表情でフルートを見つめ、ほおずりした。

彼女は、「音楽」というものにほおずりしたのだった。「ハーモニー」というものにほおずりしたのだった。

ななは、その幸せを言い表す言葉を知らなかった。

いいや、音楽家は誰も、その言葉を知らないのだった。

他の誰かもまた、懸命に練習し優しく調和し、音を奏でる体験をするしかないのだ。



一行はポワンの里へと向かった。任務の成功を報告しなければ。

城の助手の推測通り、キキはここで旅を終えるつもりは毛頭なかった。が、きちんと森の再生を完遂したことは報告せねばならない。ポワンはそれに打ってつけであった。

ポ「寄ってくださって良かった。

 女王は何も告げずに異国へも行ってしまわれるものかと危惧しておりました。

 それに・・・

 ゆなさんたちには返礼品を渡したかった」

な「そういえば、ご褒美貰えるんだったぁ」

ポ「約束は、もちろん守りますよ。

 《りりょくのつえ》

 《まふうじの杖》

 《めがみのムチ》

 《銀のタロット》

 どれがお好みで?」

な「うーん」

キ「ねぇ、1つと言わず、2つ3つあげちゃえば?

 わたし、3人の誰にも敬意を表したい気持ちでいっぱいです♡」

ポ「女王がよろしいなら、私は一向にかまいませんが?」

3人「わぁー!!」

ゆ「でも、どれがいいのかサッパリ(汗)」

キ「そうね。私のお目立てからすると・・・

 ゆなに 《りりょくのつえ》、

 ななに 《まふうじの杖》、

 アミンに《めがみのムチ》、

 がイイんじゃない♪」

3人は、キキの勧めのとおりに受け取ることにした。

キ「あ、なな?あなた左腕にはそのままコテを装備しておきなさい。

 二刀流ってことで♪」

構える武器も、ようやくいっぱしの冒険者らしくなってきた。


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