エピソード47
れいが動かなくなると、ガストンはキョロキョロと挙動不審になった。
れいの体にそろそろと近寄り、しかしガストンは止まった。
ガ「あの厄介な剣士を先にしたほうがいいな」そう小声でつぶやく。
そして、そろりそろりと隣の部屋へと抜けていった。
れ「デイジーが危ないわ!」朦朧とする頭で、れいは焦った。
ガストンはデイジーの眠る隣の部屋へ移る。
そっとドアを開ける。
部屋は暗い。ベッドからすーすーと寝息が聞こえる。
ガストンはデイジーに近寄って、寝込みを襲おうとした!
れ「デイジー!起きて!」
れいは背後から駆け寄り、そして《青銅の剣》の腹でガストンの背中を叩いた!
ガ「うがぁ!」
ガストンは不意を突かれ、そして悲鳴をあげる。
しかしれいも、意識を失い倒れてしまう。
デイジーは二人の大声に目を覚ます!
デ「貴様、正体を現したな!」
デイジーはガストンを思いきり蹴り飛ばす。そして剣を手にとるとガストンに致命傷を与え、さらにガストンのペニスを切り落とした。
うぎゃぁ!!!ガストンは悲痛な叫び声をあげて倒れ込んだ。
ガストンが気絶し身動きしないことを見届けると、れいとデイジーの二人も隣の部屋で眠りに落ちた。
翌日。差しこむ朝日で二人は目を覚ます。
ガストンは昨夜と同じ姿勢のまま、まだ気絶していた。
奴はもう放置で良いだろう。
二人は装備品を回収すると、早急に屋敷から抜け出し、森を下った。
デ「れい、どうもありがとう。おまえのお陰で助かった」
れ「結局あの人は何だったの?」
デ「吸血鬼ではない。レイプ魔だ」
れ「レイプ魔!?」
デ「あぁ。女を屋敷に連れ込んで、酒に酔わせて犯す。そのまま殺して証拠を隠滅するのだろう。
れ「物騒なことをするから吸血鬼という噂が立ったの?」
デ「わからない。血を浴びながら町に逃げ帰った娘もいて、だから魔物だの鬼だのという噂が立ったのかもしれない。
しかし、オレの予想だが・・・
奴がレイプ魔だと理解した上で逃げ帰った娘もいたはずだ。しかしルマは宗教都市。犯すだのレイプだのという言葉が飛び交うわけにはいかず、『吸血鬼の悪魔がいる』などと怖い噂を立てて城に近づかないようにしたんだろうな」
れ「なるほど・・・」
デ「でも金持ちが住んでるだのハンサムが住んでるだのと噂が立つと、誘惑されてしまう女がいて、事件が尽きないんだ。
ほとんどの女は、屋敷に入ってしまったらそこでジ・エンドだろう。
常習犯というのは、欲望を完遂するために何重にも罠を張る。オレはそれをも見越したつもりでいたが、それでもまんまと毒で気を失った。おまえがいなかったらオレすら被害に遭っていた」
れ「私も、結局睡眠薬を飲まされてしまったみたいで朦朧としちゃったの。ギリギリのところでした」
デ「れいの類稀なる精神力のおかげで助かった。並みの女では回避不能だったろうよ」
れ「私、怖かった。デイジーが何を考えているのかわからなくって・・・」
デ「あぁ。オレはあいつと化かし合いをしたつもりだった。
『吸血鬼の噂が立っているらしいね』と言いつつそれを不安がっていなかった時点で、ヤツが犯罪者だともう確信していた。
頭脳戦でも負けない自信はあったんだがな。
常習犯は手強いのだと、改めて思い知ったよ」
2人は大いに悩んだが、何も言わずにルマの町を立ち去った。
「あの城には吸血鬼じゃなくてレイプ魔がいる」と報告しても、町民は信じていいかもわからず、ますます混乱するだろう。財産目当てでデイジーたちが奴を襲った、と疑う者もいそうだ。
奴は恐らくあのまま息絶える。仮に町の娘たちがまたあの屋敷に行っても、被害をこうむることはないだろう。そして死体を見つけて町が動くだろう。