…地獄の板ばさみだった…
体力的には休憩したいのに、立ち止まると余計に寒さが増すモンだから、
神経をマヒさせる意味でも、歩き続けるしか、なかった…。
ようやく空が白み始めて、
視界が確保され始めたコトだけが、 唯一の救いだった…!
僕は、生まれたての小鹿みたいなヨロヨロの足取りで、
シナイ山の山道というより、むしろ三途の川の河川敷辺りを、
更に1時間ほども歩き続けて、
ようやく!
よーーーうやく!
山小屋の立ち並ぶ場所に、辿り着いた…!!!
指定されていた番号の山小屋を見つけて、
なんとか、
なんとか、
そこに転がり込んだ…!!!
その山小屋のマスターは、
瀕死の小鹿など見慣れているらしく、
「コーヒーでも飲むかい?10ポンドだ。
それとも、毛布をレンタルするかい?そいつは一枚30ポンドだ。」
と、斬鉄剣よりも容赦ない商売人の笑顔で、
淡々と、言った…
…僕は、
コーヒーを一杯だけ、注文した。あまりの寒さに耐え切れなくてさ。
小さなマグカップに注がれた、安っぽいインスタント・コーヒーは、
ほとんど、「焼け石に水」だった。「三途の川に、マッチ」だった。
…むしろ、
尿意を誘発しちゃって、
かえって僕をユウウツにさせた(笑)
1時間もして、
同じ車に乗っていたメンバーが揃うと、
僕らは、山小屋から出ていくよう、促された。
…???
まだ4時半で、
サンライズにはずいぶんと早過ぎた。
なぜ、こんなに早く小屋を追い出されるのか、
理由は、サッパリ、ワカラナイ…!!
周りを見渡してみると、
他の旅行者たちは、ちゃーんと防寒対策をしていた。
アタリマエだ(笑)
ハダシにサンダルで登ってきたのは、僕しか居ない(笑)
それ以外にはきっと、あのラクダ引きの少女だけだよ。
毛布の一枚でも欲しいところだったけど、
あの山小屋のマスターに30ポンドも払ってレンタルするのは、
とてもシャクに触るから、意地でもガマンしようと思った。
「ココまで耐えたんだから、もう大丈夫だろう♪」
と、思った。
そう信じて止まなかった…
『導かれし者たち』