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エピソード49

…地獄の板ばさみだった…


体力的には休憩したいのに、立ち止まると余計に寒さが増すモンだから、

神経をマヒさせる意味でも、歩き続けるしか、なかった…。


ようやく空が白み始めて、

視界が確保され始めたコトだけが、 唯一の救いだった…!


僕は、生まれたての小鹿みたいなヨロヨロの足取りで、

シナイ山の山道というより、むしろ三途の川の河川敷辺りを、

更に1時間ほども歩き続けて、

ようやく!

よーーーうやく!

山小屋の立ち並ぶ場所に、辿り着いた…!!!


指定されていた番号の山小屋を見つけて、

なんとか、

なんとか、

そこに転がり込んだ…!!!


その山小屋のマスターは、

瀕死の小鹿など見慣れているらしく、

「コーヒーでも飲むかい?10ポンドだ。

 それとも、毛布をレンタルするかい?そいつは一枚30ポンドだ。」

と、斬鉄剣よりも容赦ない商売人の笑顔で、

淡々と、言った…


…僕は、

コーヒーを一杯だけ、注文した。あまりの寒さに耐え切れなくてさ。

小さなマグカップに注がれた、安っぽいインスタント・コーヒーは、

ほとんど、「焼け石に水」だった。「三途の川に、マッチ」だった。

…むしろ、

尿意を誘発しちゃって、

かえって僕をユウウツにさせた(笑)


1時間もして、

同じ車に乗っていたメンバーが揃うと、

僕らは、山小屋から出ていくよう、促された。



…???

まだ4時半で、

サンライズにはずいぶんと早過ぎた。

なぜ、こんなに早く小屋を追い出されるのか、

理由は、サッパリ、ワカラナイ…!!



周りを見渡してみると、

他の旅行者たちは、ちゃーんと防寒対策をしていた。

アタリマエだ(笑)

ハダシにサンダルで登ってきたのは、僕しか居ない(笑)

それ以外にはきっと、あのラクダ引きの少女だけだよ。

毛布の一枚でも欲しいところだったけど、

あの山小屋のマスターに30ポンドも払ってレンタルするのは、

とてもシャクに触るから、意地でもガマンしようと思った。

「ココまで耐えたんだから、もう大丈夫だろう♪」

と、思った。

そう信じて止まなかった…



『導かれし者たち』

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