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エピソード49 『天空の城』

エピソード49


炭坑に着いた。

山にはポコポコと穴が掘られていて、まるでモグラかアリになった気分だ。

そしてミニチュアの線路が敷かれている。れいは線路というものを初めて見た。まだ長距離交通としての鉄道は普及していない。

やはり炭坑には炭鉱夫たちが居て、「何者だ?」と行く手を塞いできた。

デ「炭坑のパトロールをしてくれと、頼まれてきた」とデイジーは白々しく言った。

炭「何だって?」

デ「炭坑は魔物に占拠されやすいからな。たびたびパトロールしたいんじゃないか?」

デイジーは立派な剣を肩に担いで言った。

炭「そうか。頼もしいな」

デ「他の奴らにも話をつけておいてくれ」

見事潜入に成功した。


れ「まったく動じないのね?」入口を振り返りながら、れいは小声で言った。

デ「言ったろ?オレは悪者なんだ。人を騙すことに慣れている」

炭坑は入り組んでいて、まるで洞窟みたいだ。しかしランプがしつらえられており、視界もある。線路が敷かれている道が主道であると思われる。

れ「道がわかるの?」

デ「適当だ。特定の場所を目指してるわけじゃないからな」なるほど。


やがて、鮮やかな青い石がむき出しになったエリアに到着した。

れ「わぁ、すごい!宝石だわ」

しかしデイジーは止まらず歩き続ける。

れ「宝石を見つけたのに。掘らないの?」

デ「それはキープだ。ここにあったことを覚えておこう。

 もう少し進んでみるぞ。複数種の鉱石があると聞いたからな」

そしてしばらく迷い、進むと、今度は真っ赤な石がむき出しになっていた。

デ「こういうやつだ。掘るぞ」

れ「ルビーかしら!これも見事な宝石」

デ「こういう、女が好みそうな色のほうがカネになる」

れ「なるほど」

デ「《ホイポイ》」デイジーは物質化魔法で、小さなツルハシを取り出した。

キンキンキン!器用に大きな欠片を掘り出した。

デ「こいつはおまえにやる」

れ「え?私に?」

デ「オレはカネに困っていない」

れ「あ、ありがとう」

私のために、わざわざ炭坑まで足を延ばしてくれたのか。

れ「町に帰ったら、ちょっと豪華な食事をごちそうさせて?」

デ「いいや要らない」

れ「え!」

デ「換金する前にご馳走なんぞしたら、おまえは出費になっちまう。

 それじゃあげた意味がない」

れ「・・・!」

「付き合いの悪い人ね」「愛想のない人ね」と、デイジーを批判する人も多いのだろう。

しかしデイジーが悪い人だとは、れいは思えなかった。

れ「町に帰ったらすぐ売ればいいじゃない?」

デ「さっき言ったろ?

 他の町で売ったほうが高い値が付く。スタンシアラで売るべきじゃない」

れ「でも私、こんな大きな宝石持って歩けないわ」

デ「《ホイポイ》があるだろう」

そうか。

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