サンライズのスタンバイのために、
見晴らしのよい崖まで出ていってみると、
風はとっても強くて、やっぱり、寒かった…!!!
やっぱりというか、さらに寒かった!!!
なにしろ、台風並みの暴風域だ!!!
僕は、岩場をあちこち歩き周って、
少しでも風の弱い場所を、探そうとしたよ。
すると、1ヶ所、
地面をえぐるように 、6畳間ほどの穴が開いているところがあったから、
慌ててソコに飛び込んでいった。
寒さはいくらかマシだったから、
イヤホンで音楽を聴きながら、ひざを抱えて震えながら、
太陽が出てくるのを、待ち続けた…
…この、最後の1時間ほどが、
思いのほか、辛かった…!!!
もう、山登りをする必要もナイのだけれど、
むしろ、ソレが、苦痛の元凶だったようだよ(笑)
「人生最大の苦痛とは、タイクツである」
なんてコトバを、
どっかの詩人か哲学者が残しているだろう?
…誰も残してナイなら、
僕が教えてあげるから、
誰か哲学辞典と雑学辞典に書き添えておいておくれよ(笑)
極寒の中を、何もせず、
何にも興味をそそられるモノもナシに、
ただただ、じっと、じーーーーっと待ち続けるという作業は、
途方もなく、苦痛に満ちていた…
…僕はこのとき、考えていたよ…
「薄着の人間が、極寒の山頂で、朝陽の到来を待つ」
という行為は、
恐らく、「女性たちの出産」に、とてもよく似ているんだ。
どんだけ、出迎えに行ってあげたくてたまらなくても、
「美しく輝く太陽」や「太陽のようなツンツルテンのアタマ」が向こうから顔を出してくれるまで、
辛抱強く待ち続ける以外に、ナイのさ(笑)
ヤツらは、
全てのエゴと、全ての嘆きを、
容赦なく、無効化してしてしまうんだよ。
人間のエゴは、
ヤツらの前では、笑っちゃうしかナイくらい、無力なんだ(笑)無力だよ。
…一部の崇高な芸術家たちも、
「産みの苦しみ」というモノを経験していると思うけれど、
「薄着の人間が、極寒の山頂で、朝陽の到来を待つ」のは、
それよりも更に苦痛なのだと、解ったよ。
…なにしろ、
「ツンツルテン」がお目見えしてからも、
「完全な誕生」(ボディが全て出切ってしまう)まで、
恐ろしく時間が掛かるんだなぁ(笑)
…その事実を、僕は、
過去の旅の経験から、知っていた。
「太陽が姿を現してくれさえすれば、暖かくなるだろう」
という淡い期待は、無残にも、打ち砕かれてしまうんだ(笑)
…わかってる。わかってるんだよ(笑)
僕は、30分後くらいの自分に、同情を寄せた(笑)
ヒトは、希望や期待を抱いて気を緩めた瞬間に、大きな鉄槌を喰らわされてしまうと、
更に通常の数万倍もの肉体的・精神的ダメージを、被るモンさ(笑)
…そういうとき、
出産の場合は、ベイビーのほうが泣きわめくワケだけど、
「朝陽待ち」の場合は、コッチが泣きわめくコトに、なるんだよ(笑)
『導かれし者たち』