エピソード54
一行は、この村でしばらく滞在することとなった。
長旅の疲れを癒すため、毒消しやマヒを治す薬草の調合を教わるため。
そして老人ばかりの村人のために、手伝えることを助けてやった。
棚を直したり、ハーブを摘みに行ったり、薪を割ったり、ネズミをやっつけたり、本を読んであげたりした。
「遊び相手になってくれてありがとう」と、助けたはずのミレーユは、自分も彼らに感謝をした。
そして、隣の家に転がっていた調合のための大きな釜を、アミンに譲り渡したのだった。
一行はそれぞれに、村の老人たちと仲良くなった。
すると魔法の得意なとある老人は、ななに《メラ》と《ヒャド》の魔法を授けてくれるのだった。
一行は、戦いながら、そして人と交わりながら、少しずつ少しずつ強くなっていった。
10日の後、アミンは幾つかの薬草の調合に自信を掴んだ。
さぁ、再び旅立つか。
キキは、潔く大切なことを口にした。
キ「さて、ベロニカ?
あなたとの約束は、『ギュイオンヌの国まで護衛すること』。その任務はもう果たしたと思うのだけれど」
な「え?まだ一緒に行ったっていいんじゃない?」
キ「わたしたちはかまわないけど。
あなたは、旅がしたいわけではないでしょう」
ア「もっと賑やかな、楽しい街に行きたいって言ってたな」
ベ「・・・・・・。
以前は、そう思っていた」
キ「そう思っていたけど、今は違う?」キキは端的に話を導く。
ベ「賑やかな、華やかな街で楽しく暮らしたい。
そういう場所のほうが僕の絵描きのニーズも多いだろう。
だが・・・
この村で暮らしたい思いもある」
ゆ「10日もいると、愛着が湧くわよね」
「愛着も湧くし・・・」ベロニカは思った。
ミ「はっはっは。若者よ。
聖都ギュイオンヌか、そうでなくとも大きな街に行きなされ。
そなたはまだ若い。もっと人生を楽しむべきじゃよ。
おなごとも遊びたいじゃろう」
べ「でも・・・」
ミ「心配なさんな。この村に助けは要らん」
ベ「で、でも・・・」
ミ「わかっとる。
もし、な。
聖都にもどこの街にも、おぬしの居場所がないなら・・・
その時は、ここに帰ってくればよい。
そのときにわしがもう居らんなら・・・
この家に勝手に住めばよい。
表札も書き替えておくわい。はっはっは」
ベ「ミレーユさん・・・!!!」ベロニカはまた、じゅるじゅると泣いた。
ミ「心清くとも、居場所がないことも、ある」