エピソード99
着替えを済ませて腹ごしらえをすると、教会へと赴いた。
ア「司教様、お話があります!」
司「えぇ、なんですか?」カテドラルのお偉いさんは、優しそうな人である。
アンリは司教を裏手へと連れていく。
ア「あのう、しばらくお休みをいただけないでしょうか?」
司「えぇ、まったくかまいませんよ。
故郷にでも帰られるんですか?いや、アンリさんの故郷はこの街だったなぁ」
ア「ぼ、ぼ、ぼ・・・」
司「ぼぼぼ??」
ア「ぼ、冒険に、行かせてください!」
司「冒険ですって!?
何をおっしゃっているんです?」
ア「あの、街の南の巡礼路を行くと、森に落ち当たりますよね?」
司「そう。あの道はもう、巡礼路としては旧道ですよ。危ないですからね。
巡礼をしたいのですか?」
ア「いいえ、違うのです。
巡礼路を塞いでいる、ひとくいそうを退治してあげたいと思うのです!」
司「あの食中植物の狂暴化したやつのことですか?あなたが?」
ア「は、はい!巡礼路を塞いで巡礼者の邪魔をするなど許せませんわ!」
司「それはそうですが、あなたにそんなことが出来るのですか?
私は、大切なシスターが命の危険を冒すことを後押しは出来かねますが・・・」
ア「彼女がいてくれるなら、出来ると思うんです!」
アンリはれいの背中を司教に突き出した。
司「あなたは・・・
ひょっとして、鐘楼を鳴らしてくださった方ですか?」
れ「あ、はい。れいといいます。冒険をしてここまで来た者です」
ア「れいさんがいるなら、私だってジャングルに行けると思うんです!」
司「ジャングル?」
ア「いえ、悪さをするひとくいそうを退治出来ると思うんです!」
司「・・・・・・。
ピクニックではないのですよ。わかっているのですか?」
ア「わかっています!」
司「そうですか。それなら止めません。
あなたにとってそれが大いなる挑戦なら、止めるべきではないでしょう」
ア「あ、ありがとうございます!」
司「れいさんとやら、どうかアンリさんを助けてやってください」
れ「はい、がんばります」
ア「やったぁ!」
どうやらお偉いさんの許可は得る事が出来たようだ。
司「《薬草》をたくさん買ってお行きなさい。
それと、何か守備力の上がる防具をきちんと調達していくんですよ」
2人は司教の言いつけを守った。
まずは道具屋に行って《薬草》をたくさん買い込み、《毒消し草》と《まんげつ草》も持った。
そして防具屋を訪ねる。
れいは自分の過去を参考に、《サフランローブ》が良いのではないかと勧めたが、「そんなのは安すぎるわ!」とアンリは突っぱねるのだった。彼女はお金持ちのお嬢さんなのだった。
お金持ちなら立派な武具を買えるが、お金持ちほど軟弱な傾向がある。大丈夫なのだろうか・・・れいは少し不安になった。
ア「うん。これね!」
アンリが選んだのは《魔法の法衣》だった。僧侶や魔法使いに好まれるローブで、敵からの魔法攻撃を軽減する効果がある。形は教会の神父のローブのようであり、色々な面で妥当な選択だと言えよう。
「武器も買いに行きたいわ」とアンリは言ったが、その必要はなさそう、とれいは止めた。
れ「アンリに私の杖を貸してあげる」と。最近手に入れたばかりの《いかずちの杖》は、振りかざすことで《ベギラマ》の効果を発揮するのだ!魔力の消費を無しに、である。《ベギラマ》など使えない者でも、だ。たしかにこんなにうってつけな武器はない!