第11章 のんびり
7日目、イベント終了の鐘を待たずして、二人は宿屋の酒場で収穫を愛で合っていた。
テーブルに種や木の実を並べて数えている。
リ「《ちからの種》が10個に、《すばやさの種》が14個に、《まもりの種》が7個、《いのちの木の実》が10個、そんで《ふしぎな木の実》が8個。まぁまぁの収穫ね。二人で半分こしましょ」
通りすがりの冒険者がそれを見て、「ぷぷっ!コイツら、《女神の果実》が何かもわかってねぇよ」と小声で嘲笑して去っていった。
マ「ムカっ!《女神の果実》だって持ってるもん!」マナはほっぺたを膨らませた。
リ「まぁまぁ。怒らないことよ。挑発に乗らないこと。バカを演じてればイイのよ。
それが作戦なの。言ったでしょ?」
マ「そうだけどぉ」
二人はともにレベル9。他の冒険者たちは12~13程度であるようだった。しかしパラメータにそん色はないのだ。
《女神の果実》イベントの終了と同時に、新ステージ第2層と、そこに続く《いざないの洞窟》が追加された。冒険者のほとんどは、我先にと第2層を目指して走った。
マ「リオぉ、わたしたちも早く第2層に行こうよぉ♪
可愛い魔女っ子服あるかも?メルヘンチックなお花畑があるかもよ?」
リ「ううん、急がないわ。アタシたち弱いフリしたいし、実際弱いんだから。
新しいエリアは何があるかわからないから、ある程度情報が出回ってからのほうがイイと思うの」
マ「えぇ~つまんない」
リ「まだこっちの世界でもやることはあるわよ♪
アタシ、アンタから学んでちょっとやっておきたいことあるの。アンタは先行ってる?」
マ「むりぃ」
リ「それに、第1層にだってキレイな景色がいっぱいあるわ。
旅って、のんびり風景を楽しむことも醍醐味だと思うのよね♪」
二人は宿屋を出て、アリアハンの城下町を抜けて歩いた。
いつぞやの老人は、今日も軒下で微笑みながらお茶をすすっていた。
マ「こんにちは。いいお天気ですね」
爺「ふぉっふぉっふぉ。無意味そうに思えることにも意味がある。意味のないこともあるが、大抵は意味がある」
マ「またおんなじこと言ってるわ」
町を出た。二人は手足をぶらぶらと振り、準備体操をする。
リ「さてと、とりあえずいつかの《どくいもむし》、倒しに行きたいの。手伝ってくれる♪」
マ「えぇ!いまさら!?他の敵倒すほうがけいけんち稼げるんじゃない?」
リ「ウフフ。経験値目的じゃないの。アンタの真似したいのよ♪ 《毒》攻撃受けまくったら、《毒》耐性付くでしょ?それをアタシもやっとこうと思って。
タブン今なら一人で戦っても5回の《毒》攻撃に耐えられると思うけど、いちお回復役としてついてきてくれない?」
マ「ふぅーん。いいよ」
そして二人は西の洞窟に赴き、再び《どくいもむし》と戦った。ぼうぎょしながら《毒》攻撃に耐えていると、やはりリオも《毒》耐性を獲得することが出来た!《毒》の状態異常の罹患確率を下げる防具は少々ある。しかし、完全な《毒》耐性を持つプレイヤーは、まだこの世界でただ二人だけであった。
マナとリオは、ときに目的もなくアリアハン島を歩き回った。そして、朝靄の高原や夕暮れの砂漠に絶景を見つけては、ただただその自然の神秘を眺めていた。
『僧侶だけで魔王を倒すには?』