第17章 カザーブ
ロマリアの城で、城の者や冒険者たちから情報を得ると、かなり北のほうに《金のかんむり》を盗難した輩は逃げていったらしい。
二人は思い切って、城から大きく離れ探索してみることにした。
マ「それにしても、この大陸は森ばっかりだねぇ」
城から北は森ばかりが広がっている。そのためか、世界全体が薄暗く感じられる。北に向かう冒険者は多いが、逆に引き返すように南に下るヘトヘトの冒険者の姿もよく見かける。愛想がないのか、マナたちに話しかけてきさえもしない。
しびれを切らして、二人は南下する女性パーティに話しかけてみた。このパーティも戦闘に疲弊し、そして元気がない。
冒「いやぁ、敵が強すぎてさ。途中で体力が持たなくなるんだよ。それで退散してるだけさ。
おそらく皆そうなんだろうと思うよ」
リ「そんなに立派な鎧を着て、強そうでもあるのに?」
冒「いやいや聞いてくれるな!知ってんでしょ?」
リ「え、何がですか?」
冒「カジノのせいだよ。闘技場。
闘技場のギャンブルに熱中しすぎちまった連中は、厄介な特性を獲得しちまう。
その名も『中毒者』。ハハ」彼女は苦笑いしている。
マ「ギャンブル中毒者?」
リ「で、その特性はどんな効果なの?」
冒「戦闘開始のたびに、力が抜けちまう。全部のパラメータが10%低下しちまうんだよ」
リ「しんどっ!」
冒「この呪いみたいな特性は、どっかに解除する方法があるらしいんだ。
今さらニューゲームでやり直しなんて気が進まんからさ、特性を背負ったまま強引に進めてんだよ。でも戦闘はしんどい。
でも、不幸中の幸いっていうのかな。ここがロマリアで助かったよ」
リ「何が?」
「ロマリアには強力な武器や防具が揃ってるだろ?地道にゴールド稼ぎして武器を揃えさえすれば、《中毒者》の特性を背負っててもどうにかなるってもんさ。
…いや、どうにかなると踏んで、装備整えてから北上するんだが、思いのほか森が長くてね。村だか駐屯地だかに辿りつくまえに、限界を感じて引き返すんだよ。もうちょいレベル上げしてまた出直すかなって」
リ「なるほど…。
闘技場に熱中、重装備、北から引き返してくる、その3つのパターンの人ばっかりなのは、そういう理由があったのね」
マ「ギャンブルしなくて良かったねー!」
もっともだ。
冒「それにしても君たち、そんな軽そうな装備で奥まで行けるのか?」
リ「わからないけど、まだ体力には余裕があるわ」
冒「すごいな!感心するよ」
二人は、「プレイヤーたちの中でも上位のほうになってきたのかもしれない」そんなふうに思った。それだけの苦労と遠回りを踏んできたものだ。最弱だったはずのコンビだ。
森を抜け山を抜け、二人は懸命に歩いた。そして戦った。根性の面でも、ずいぶんたくましくなったものである。歩いている間に夜になってしまったが、森の中で野宿をするのは無理があると思えた。仕方なく二人は、夜通し歩き続け、戦い続けた。
朝霧が晴れる手前、二人は山間いの村に到着した。「カザーブの村だ」と村人は言った。村というよりは、冒険者たちが休憩を挟むための粗末な野営地にすぎない赴きだった。雑魚寝の宿屋しかなく、乙女な二人にはしんどいものだった。
リ「《金のかんむり》を盗んだヤツはどこに行きましたか?」村人に尋ねてみた。
村「盗難?この辺の森にはエルフが出て、ときどき人間にイタズラをするという伝承がある」と村人は話した。
マ「エルフ♪」ファンタジーっぽい単語にマナは胸躍る。
リ「そいつらが王様のかんむりを盗んだのかな?」
マ「エルフちゃんが盗みを働くとは思えないけどなぁ」
リ「もう!アンタはお花畑すぎんのよ!」
『僧侶だけで魔王を倒すには?』