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第18章 ラリホー

第18章 ラリホー


休息と言ってよいのかわからない休息を挟んだのち、二人はさらに村を北上してみた。

モンスターが現れた!眠そうな、やる気の無さそうな顔を持つ、キノコのお化けが3匹だ。

マ「可愛いぃ♪これが妖精ちゃんじゃないの~?」

リ「可愛い!?これって可愛いの?キモカワ!?

 植物が生き物じみてたらそれが妖精と言われるのかもしれないけど、おそらくドラクエにおいては、コレはモンスターにすぎないわよ…」

リオの《メラミ》でまずは1匹を仕留める。マナはMPの節約を考えて《刺のムチ》で全体攻撃だ。やはりそれでは倒しきることは出来ない。キノコたちはボテボテと気だるく動き、戦意があるのかどうかもよくわからない。

リ「獰猛ではなさそうね…」リオがそう分析しようとした瞬間…

「ラリホー!」《お化けキノコ》Bは眠りを誘う妨害呪文を唱えてきた!

リオはその瘴気を素早く身交わす。

マナは対応しきれない!マナを急激な睡魔が襲う。体がよろけ、まっすぐ立っていられない。

リ「しっかりしてちょうだい!」リオはマナにハッパをかけつつ、《メラミ》でもう1匹の《お化けキノコ》を仕留める。

《お化けキノコ》Cは眠そうな顔で大きく息を吸い込む。再び《ラリホー》か!?と警戒してリオは飛び下がる。

しかし《お化けキノコ》Cは、どこから出しているのかよくわからないホーミーのような奇声を上げた。なんと、《お化けキノコ》Dがどこからともなく加勢に来た!仲間を呼んだのである。

リ「もう!メンドクサイわねぇ!」

《お化けキノコ》Dは呼ばれて早々、あくびをするかのように瘴気を吐き出した。「ラリホー!」

リ「う!」リオもその瘴気に頭がクラクラする。そしてマナはついにぱたりと倒れ込む。

リ「メラミ!」リオはわずかに残る意識で必死の抵抗を試みる!《お化けキノコ》Cに向けて放ったつもりの《メラミ》は方向を失い、しかし《お化けキノコ》Dに命中!当たれば一撃で黒コゲだ。

リオは《メラミ》を放つと同時に、意識を失い眠りこんでしまった。

《お化けキノコ》Cは、自身も酩酊しているかのようにヨロヨロと動き、手持ち無沙汰にしている。たびたび妙な奇声を発する。仲間を呼びたいようだが、なぜか仲間はやってこない…

《お化けキノコ》Cはヨロヨロと徘徊しながら、ときどきマナやリオを殴りつける。強烈ではないが数ポイントのダメージで徐々に命を削ってくる。

静かで奇妙な戦いが数分続いたのち、ようやくリオの意識が戻った!

リ「はっ!何してたんだっけ!?とにかく《メラミ》!」リオは冒険好きの本能で、とりあえず目の前のモンスターを《メラミ》で仕留めた。

《お化けキノコ》の群れはようやく全滅だ。


リ「マナ、起きて!」リオはマナのほほを軽くひっぱたいて起こす。

マ「う…ん」マナは無事、意識を戻した。

リ「強いのか弱いのかよくわかんないモンスターだったわね!」

マ「強くはなさそうだったよ?」

リ「これタブン、前に獲得した《ありキラー》特性のおかげよ!覚えてる?仲間呼びをするモンスターが、1度しか仲間を呼べなくなる特性」

マ「あぁ、そんなのがあったような?」

リ「延々と仲間呼ばれて、《ラリホー》で眠らされて、眠ってる間にサンドバッグにされたら、1匹ずつの攻撃力は低くてもいつの間にか全滅…てなことになりかねない。そうやって森の中で誰にも気づかれず全滅してった冒険者も数知れないんだわ」

マ「弱そうに見えて、弱くない?」

リ「他の魔物と一緒に現れたら、先に倒しておいたほうがいいんでしょうね。フツウは」


二人は兜の緒を締め直して、森を進んだ。

しばらく歩くと、なんと森の中で倒れ込んでいる二人の男女の冒険者を発見する!

マ・リ「大丈夫ですか!」二人は駆け寄って体を揺すった。

男「はっ!」男は目覚める

男「起きろ!アイリス!」彼はもっと強引に彼女を揺すって、覚醒を促した。

女「う…ん」彼女も意識を取り戻した。

リ「良かった。重症ではないみたいですね」

男「ありがとう!眠ってしまっていたんだ」

マ「もしかして…?」

女「《お化けキノコ》に眠らされたんです。それはかろうじて覚えてるわ」

リ「この辺りに迷いこむプレイヤー、多いんでしょうか?」

男「だろうな。エルフの隠れ里がある、という噂がある」

リ「プレイヤーはとりあえず、そこに向かおうとするわよね」

男「侵入者を拒みたいからエルフたちがかく乱してきてるのか、モンスターたちがただ邪魔をしているのか、それはよくわからないな」

女「幻惑の森ね、色んな意味で」

男「それにしても助かったよ。ありがとう」

女「親切な冒険者さんね」

リ「ドラクエは基本的に、ソシャゲというよりロープレだからね。プレイヤー同士でいがみ合う意味もないって、アタシは思ってるんです」リオはにっこり微笑んだ。

カザーブの大体の方向を示して、二人は迷子の冒険者たちと別れた。一筋縄では進めなくなっている冒険者も、増えてきているようだった。



『僧侶だけで魔王を倒すには?』

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