第28章 ドワーフ・その2
二人はアネイル周辺のフィールドに戻ってみることにした。
《テベロ》にせよ《とさかへび》にせよ、《バギマ》1発では倒せたり倒せなかったり、というところであった。でもそこに《バギ》でも加えれば一掃できる。戦闘は各段に楽になった!
リ「よぉし、いっちょ炭坑探しに行ってみるか!」
マ「おぉー♪」
二人は温泉問題の元凶を探して、東の山に向かって歩いた。
道は段々と草地を失い、荒野になってきた。緩やかに標高が上がっていく。
見たこともない大きなミミズが砂嵐を起こしてきたり、可愛いけれど凶悪な黄色いドラゴンが炎を吐いてきて、行く手を阻む。しかし善戦は出来るようだった。
やがて炭坑に辿り着く。
捨てられた手押し車や大きなシャベルが、寂しげに朽ち果てている。炭坑洞窟へと延びる、踏みならされた畦道があり、しかし道に反れていく細い脇道がもう1つある。
炭坑の深部に続いているのは明らかに太いほうの道であると思われた。しかしリオは、まず細い道を進んでみようと提案した。何も無ければそれでも良い。
細い道をしばらく進んでいくと、小さな洞穴があった。
リ「入ってみようか?」二人はおそるおそる、奥に進んでみる。モンスターはいない。洞穴はとてもシーンとしている。
30mも進むと突き当たってしまった。突き当りには、木の古びたテーブルと丸椅子があった。
「何もないか」とリオは思った。
そして引き返そうとすると、
「あれ…?誰かいる?」マナがきょとんとしている。
リオが再度振り返ってみると、丸椅子に腰かけてじっとしている人型の姿が見えるではないか!
リ「…ドワーフ?」エルフの里で見たドワーフとどこか似た姿をしている。
ド「なに?おまえたち、俺の姿が見えるのか」
リ「あ、どうも」
マ「冒険者なんです。勝手にお邪魔してすみません」
ド「人間だろう?普通は見えないはずだ」
リ「でも、見えちゃいました(汗)」
ド「………。
おまえたち、あまり肉を食わないな?」
マ「そう、かもです。わたしお肉ってあんま好きじゃないなぁ」
リ「アネイルで会席料理に夢中になってる連中と比べたら、グルメに興味はないかな」
ド「そうだろう。体の成分配合の問題だ。
肉や酒ばかり食って体の淀んでいるやつらは、妖精の姿は見えない」
リ「ヘルシー志向で助かった、のかな?」
ド「もう1つ質問をする」
リ「な、何か?」
ド「遥かロマリアの地で、エルフの女王が国王の冠を盗んだと聞いた。その話を知っているか?」
リ「いいえ。それは正しくないわ。エルフの女王は冠を盗んじゃいないの。
それは人間が流したマユツバよ!
アタシたち、その事件を解決してきた張本人なの」
うんうん!とマナは首を振った。
ド「………。
おまえたちには敵対はしない」
マ「あ、ありがとう」
ド「珍しい道具を、幾つか持っているぞ」
ドワーフは、テーブルの上に手工品を並べた。
まんげつ草 30G
まだらくも糸 35G
魔法の聖水 100G
どくがの粉 500G
リ「わーお、珍しいアイテムばっかり!」
それぞれを数個ずつ買わせてもらった。
《どくがの粉》は敵1体を《マヒ》状態異常に陥れることが出来る非常に強力なアイテムだ。そのぶん、消耗品としては突出して値段が高く、また入手ルートも少ない。
『僧侶だけで魔王を倒すには?』